「そうですわ、あなた。
どうせ、嫁げばわかるんですし」

同意だと義母が頷く。

「それもそうだな」

これまでの自分を恥じるように小さく咳払いし、父は真っ直ぐに私を見た。

「異能特別部隊は知っているな?」

「……はい」

異能を持つ、名門貴族で構成されている特殊部隊。
軍でもエリート中のエリートだ。
そんなところの方が私を?
それこそ、考えられない。

「その部隊の白珱(びやくえい)様がお前を欲しいそうだ」

それを聞いた途端、戸がガン!と思いっきり閉まったかのごとく目の前が真っ暗になった。
身体がぐらりと揺れ、思わず手を畳につく。
白珱様とは異能特別部隊で飼われている鬼だ。
戦闘力は高いが気性が荒く、長官以外は手に負えないと聞く。
そんな鬼が、私をもらいたいと?

「……嘘。
そんなの嘘ですよね、お父様」

「嘘じゃない。
よかったじゃないか、お前をもらってくれる人が現れて」

父は本気で言っているんだろうか。
嫁げばきっと、殺される。
いや、嫁なんて言っているが、嬲って殺すのが目的なのでは。

「お願いです。
なんでもします。
後生ですから勘弁してください……!」