幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

私の命令は簡単に破れるのなら問題はないのかもしれない。
けれどもし、私が誰かに漏らしたら?
それこそ旦那様の敵となる人間、……綱木中尉とか。
いや、旦那様が綱木中尉ごときに屈するはずがないけれど。

「涼音はやつがれの嫁だからな。
特別だ」

嬉しそうに笑い、彼が口づけしてくる。
そうか、それだけ旦那様は私を信頼してくれているんだ。
それが、酷く嬉しい。
大事な旦那様の本当の名前、私の胸の中に大切にしまっておこう。

夕餉の時間になり、母屋のお座敷へ移動する。

「上げ膳ですわ」

「据え膳ですわ」

うきうきしている船津さんたちが可愛らしい。
家では料理は通いの料理人が作っているが、給仕と後片付けは彼女たちの仕事だ。
今日はなにもしなくてもいいので、それは嬉しいはずだ。

今日は船津さんたちもお客様なので食事をともにする。
お座敷に入って私の目の前に広がっていたのは、洋食ではなかった。

「ひさしぶりの和食……!」

お寿司に天ぷらと見慣れた料理が並ぶ。
なによりもお米が食べられるのがいい。
家ではライスカレーの日くらいしかお米は出ないのだ。

「なんだ、和食がよかったのか」