いつ、紫乃に、義母に呼ばれるだろうかとびくびくしながら過ごす。
朝餉が終わっていくらもしない頃、父たちに呼ばれた。

「あらお姉さま、着物を新調なさったの?」

紫乃の視線がちらりと部屋に入った私に向く。

「貧乏くさいお姉さまがさらにみすぼらしくなって、とてもお似合いよ」

高らかと紫乃が声を上げて笑う。
くすんだ濃い灰色のような山鳩色の着物は、若い娘どころか年寄りでも敬遠しそうだが、私にはこれしかないのだから仕方ない。
それに、裸よりマシなので別によかった。

私がはるか末席に腰を下ろしたのを確認し、父が口を開く。

「お前に縁談の話が来た」

「私に、ですか……?」

無能の私に嫁のもらい手など現れるはずがない。
父は冗談でも言っているのだろうか。

「そうだ。
さるお方が、お前を嫁にもらいたいそうだ」

「はぁ……」

そう言われてもにわかには信じられない。
何度もいうが私は無能で、なんの価値もないのだ。

「お父さまぁ。
はっきり言ってやったほうが、お姉さまのためですわ」

ちらっ、ちらっと私に視線を送りながら、紫乃はイヤラシくにやにやと笑っている。