幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

別荘には老夫婦がおり、私たちのお世話をしてくれる。
旦那様を見ても平然としているのは、綱木長官の教育が行き届いているのだろう。

「ところで。
ハニィムーンってなんですか」

旦那様も、船津さんたちもハニィムーン、ハニィムーンというが、私にはその単語のなじみがない。
ずっと、なんのことだか疑問だったので、船津さんたちの同行になんの問題があるのかもわからなかった。

「ハニィムーンとは西洋の風習で、結婚したばかりの男女が旅行に行って親睦を深めることだ」

「結婚した男女……」

それは私と旦那様だと気づき、途端に顔がぼっと火を噴く。

「蜜のように甘い時間だから、ハニィムーン……蜜月というらしい」

「えっ、あっ、あま」

「そうだ。
……特別に甘い時間を過ごそうな」

旦那様が私を抱き寄せ、耳もとで囁く。
そのうっとりとした声は私の頭をじんと甘く痺れさせた。

「はいはーい。
そういうのはふたりきりのときにやってくれません?
もー、あんたのそういう甘い顔、気持ち悪くて仕方ないっての」

うんざりするように菰野さんが、肩を竦めてみせる。