幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

しかし彼は怒って、勢いよくふたりの腕を振り払ってしまった。
もう定番の光景につい、くすくすと笑っていた。

「でもよかったんですの?
旦那さまたちのハニィムーンに私たちがお邪魔して」

「そうですわ、そうですわ。
せっかくのハニィムーンなのに」

頬に手を当て、船津さんたちが申し訳なさそうにため息をつく。

「いいんだ。
日頃、なにかと苦労させているお前たちの労いもかねているからな」

飲んでいたお茶の湯飲みを置き、旦那様は船津さんたちに微笑みかけた。
それになんとなく胸の内がもやっとした気がするのは気のせいだろうか。

今回は綱木長官から温泉にでも浸かって疲れを癒やしておいでと言われたそうで、一週間ほど彼の別荘に滞在する予定になっている。
旦那様をあんなに痛めつけたのは綱木長官なのにと憤っていたら、飴と鞭なのだと旦那様は笑っていて、複雑な気持ちになった。

別荘は旅館と見まごう建物でしかも温泉付き、人喰らい狒々との戦いで傷ついた旦那様の身体も、力を使いすぎた菰野さんの体力も癒えそうだ。
もっとも、旦那様が受けた痛手は綱木長官のお仕置きのほうが大きいのだけれど。