帝都を脅かす人攫いこと人喰らい狒々は倒された。
しかし、事は秘密裏に処理されたため、表向きはまったく知らない人間が犯人となっていた。

「なんかもやっとします……」

旦那様とお茶をしながらはぁっとため息が漏れる。
綱木中尉が捕まえた特能の彼は無実が証明され、釈放された。
それもそうだ、彼が逮捕されたあとも人攫いは続いたわけだし、誰の目から見ても彼が無実なのはあきらかだ。
しかし、今度もやはり実際は人攫いなどしていない人間が、犯人に仕立てられている。
もっとも、無実とは言えないようだが。

「あれが落としどころなのだ、割り切れ」

「それは、そうなんですけど」

はっきりとこれが人攫いだと捕まらなければ、帝都の人間は納得しないだろう。
それで、人身御供が必要だったのも理解している。
それでもやはり、納得はできない。

「それにあやつは実際、多くの女子供を外国に売り飛ばしていたからな。
人攫いには間違いない」

ここしばらく行方不明になった人間の一部は逮捕された男の仕業だった。
彼が捕まるのは納得だが、人喰らい狒々の被害も彼のせいにされるのがなんか納得いかないのだ。

「そう、ですね」