「息をしているのならそのうちよくなるから放っておけ。
それで、ある程度回復して余裕が出てきたところで精気をわけてくれると助かる」

俯いてしまった私の頭を慰めるように旦那様が軽くぽんぽんと叩く。
顔を上げると目のあった旦那様は苦笑いした。

「わかりました」

苦しんでいる旦那様を見ているだけしかできないのはつらいけれど、それで私を死なせてしまって旦那様が悲しむのであれば本末転倒だ。
次はじっと我慢して、旦那様を見守ろう。

「それにしてもあんなになるなんて、綱木長官からなにをされたんですか」

「……聞くな」

先ほどまでは私にあんなに楽しそうに林檎を食べさせていた旦那様だが、今は顔が真っ青になっている。

「……思い出したくもない」

そのときを思い出しているのか、旦那様は自分の肩を抱いてガタガタと震えていた。
旦那様がここまで怯えるなんて、よっぽど惨い目に遭わされたようだ。

「……その。
綱木長官、って」

あの笑顔とは裏腹に絶対に逆らってはいけない、恐ろしい人だというのは聞いた。