旦那様が舐めた傷からは、あれほど出ていた血が止まっていた。

「やつがれの唾液には多少の治癒効果があるのだ。
本当は血を飲んだほうが確実なのだが、妖の血は人間には毒だからな」

「そう、なん、です、ね……」

旦那様が元気になったみたいで安心して気が抜けたのか、頭がくらくらする。
身体に力が入らなくなって、ぽすっと旦那様の胸に倒れかかっていた。

「すみま、せん」

身体を起こそうとするが、力が入らない。

「いや、いい。
血と精気をを失いすぎたのだろう」

旦那様は私をベッドに寝かせようとしたが、血で汚れたシーツを見て顔を顰めた。

「すまぬ、しばし……涼音?
涼音!」

心配そうな旦那様の声を最後に、私は意識を失った。