それは私の身体だけではなく、周囲のものを濡らしている血全部がぞろりぞろりと集まっていく。
ひとまとまりになったあとは、しゅるりと地面に吸い込まれた。

「すみません。
あと、頼みます」

言ったかと思ったら菰野さんはばたりと倒れ、意識を失っていた。

秘書官が菰野さんを車に乗せ、私たちも車に乗り込んだところで綱木長官がぱちんと指を鳴らす。
途端に私たちは表の世界に戻っていた。
しかし長官と旦那様の姿はどこにもない。
あのまま裏の世界に残ったようだ。

家では船津さんたちが心配して待っていた。

「ふたりとも大怪我ですわ」

「大変ですわ、大変ですわ」

てきぱきとふたりは私たちのお世話をしてくれた。
気を失ったままの菰野さんはあいている部屋のベッドに寝かせ、傷の手当てを。
妖の血は菰野さんが取り払ってくれたとはいえ、汚れている私はお風呂に。
頬の傷を手当てし、さらに妖の血を浴びて痛めてしまった皮膚には丁寧に軟膏を塗り込んでくれた。

「大変でございました」

最後に、気持ちが落ち着く効果があるという、ハーブティを淹れてくれた。
ハーブは裏庭で、田沢さんが栽培しているらしい。