「わかっているなら、おまえには厳しい仕置きが必要なのも理解しているね?」

少しでも旦那様を励まそうとした私を遮るように、綱木長官が彼の前に立つ。
旦那様を見下ろす彼は内容とは裏腹に笑っていた。

「……わかっておる」

どうにか身体を動かし、旦那様が立ち上がる。
が、すぐに膝が崩れてしまった。

「旦那様!」

慌てて彼を支える。
こんなに深手を負って、まだ体力は回復していない。
なのに立つなんて無理だ。

「……立て」

けれどすぐに、綱木長官の冷たい声が飛ぶ。

「立て。
白珱」

「急かすな。
わかっておる」

目をつぶって小さく深呼吸したあと、旦那様は気合いを入れて立ち上がった。
しかしやはりかなり無理をしているようで、足がぶるぶると震えている。

「ちょっと行ってくる。
なに、すぐに帰ってくるから心配はいらん」

心配で心配で泣きそうになっている私の頭を、旦那様は微笑んで優しく撫でた。

「では、行こう。
……ああ。
菰野くんにはまだ車の運転は無理だろうから、君が送ってあげて」

長官から指示を出されて秘書官は頷いた。

「……と。
その前に」