三歩後ろに控えていた秘書官が、黙ってうんと頷いた。
「どれ」
狒々へと近づいた彼はその身体へと手を――突き入れた。
ずぶずぶとその腕が肩まで狒々の身体の中に埋まっていく。
すぐにぐちゅり、ぐちゅりと肉を掻き回す嫌な音があたりに響いた。
「あった」
ずるりと長官の腕が狒々の身体から出てくる。
不思議と腕は汚れていなかった。
すべて出きった彼の手には人間の頭蓋骨が握られている。
「ひっ」
思わず小さく悲鳴を上げ、旦那様に抱きつく。
「昨日の今日だからね。
まだ消化しきれてなかったみたいだ」
平然とした顔で長官は、秘書官に渡された手ぬぐいで頭蓋骨を拭いていた。
「……じゃあ」
そんな、まさか。
浮かんでくる考えを必死に打ち消す。
「うん。
全部これが、喰らったんだろうね」
長官の足が雑に狒々を蹴り、目眩がした。
否定してほしくて旦那様の顔を見上げる。
しかし彼も、菰野さんも気まずそうに私から目を逸らした。
そうか、彼らは人攫いといっていたが、本当は人喰らいなのを知っていたのか。
知らないのは私だけだったのだ。
「そんな目でやつがれを見るな」
「どれ」
狒々へと近づいた彼はその身体へと手を――突き入れた。
ずぶずぶとその腕が肩まで狒々の身体の中に埋まっていく。
すぐにぐちゅり、ぐちゅりと肉を掻き回す嫌な音があたりに響いた。
「あった」
ずるりと長官の腕が狒々の身体から出てくる。
不思議と腕は汚れていなかった。
すべて出きった彼の手には人間の頭蓋骨が握られている。
「ひっ」
思わず小さく悲鳴を上げ、旦那様に抱きつく。
「昨日の今日だからね。
まだ消化しきれてなかったみたいだ」
平然とした顔で長官は、秘書官に渡された手ぬぐいで頭蓋骨を拭いていた。
「……じゃあ」
そんな、まさか。
浮かんでくる考えを必死に打ち消す。
「うん。
全部これが、喰らったんだろうね」
長官の足が雑に狒々を蹴り、目眩がした。
否定してほしくて旦那様の顔を見上げる。
しかし彼も、菰野さんも気まずそうに私から目を逸らした。
そうか、彼らは人攫いといっていたが、本当は人喰らいなのを知っていたのか。
知らないのは私だけだったのだ。
「そんな目でやつがれを見るな」



