旦那様が庇うように私の上に身を乗り出し、慌てて窓を閉める。

「菰野、あとはまかせた」

「了解です!」

すぐにバタンとドアの閉まる音がし、旦那様が車の外に出たのだとわかった。

「今度こそ、仕留めてくださいよ……」

菰野さんが祈るように呟き、水筒を開ける音がする。
見えないのがわかっていながら、窓の外へ目をこらした。

……大丈夫。
旦那様なら、きっと大丈夫。

時折、ぎゃっと短く悲鳴が上がる以外は、どうなっているのかわからない。
――と、突然。

「うわっ!」

どーん!と大きな音がして、車が大きく揺れる。
おかげで座席を転がった。

「涼音さん、大丈夫ですか!?」

「はい、なんとか」

そろそろと起き上がって座り直し、また衝撃がきてもいいように手探りで前の座席に抱きつく。

「ちょっとこれは、マズいかも……」

車内だというのに菰野さんは次々に水筒を開け、中身をぶちまけている。

「すみません、僕も援護に出ます。
涼音さんは絶対に車から出ないでください。
車の中にいれば安全ですから。
いいですね、絶対に出てはいけませんよ」

私に厳命し、菰野さんがドアを開ける。