女学生になったようで嬉しくはあるが、それよりも〝いざとなったら〟とか〝なにかあったとき〟とか不穏な言葉が出てきて落ち着かない。

「絶対にヤツを仕留める。
心配しなくていい」

安心させるように旦那様が私に微笑みかける。

「はい。
ご武運を」

私もそれに精一杯、笑って返す。
私が不安になって旦那様の足を引っ張ってはいけない。

「では、涼音さん。
よろしくお願いします」

まだ日も高い時間から囮作戦が決行された。
人攫いが出やすい夜ではなく昼間なのは私がいるから釣られて出てくるだろうというのと、夜間よりは安全だからだ。

「大丈夫ですよ、僕がしっかり警護しますから」

そういう菰野さんの隣の座席には大量の水筒が積んであり、車が揺れるたびにガチャガチャとうるさく音を立てている。

「あの、これは……」

「ああ。
今日こそは絶対、人攫いを捕まえなければなりませんからね。
その準備です」

水筒がなんの役に立つのだろうとは思ったが、なにか考えがあるのだろうと黙っておいた。

「では」

旦那様がパチンと指を鳴らすのにあわせて菰野さんがペダルを踏み込む。