幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

少し悩んだあと物憂げに私がため息をつくのを見て、旦那様は頭を抱えていた。

「涼音」

「はい?」

旦那様は深刻そうで、つい首が斜めに傾く。

「これからはやつがれがもっと、楽しいことを経験させてやる。
それでこの世に死にたくなくなる未練を作ろう」

「はぁ……」

そんなに真剣になって未練を作らなければならないなどと、私には理解ができなかった。


「絶対に車から出るな」

「はい」

翌日、準備を済ませた私に、何度も旦那様が言い含める。

「いざとなったら菰野もやつがれも捨てて逃げろ」

旦那様は真剣だが、その〝いざ〟というときって?
旦那様も菰野さんも倒れてしまった姿を想像し、身体がぶるりと震えた。
ううん、絶対そんなことにはならないはず。

「これを破れば表に戻れる。
持っておけ」

私の手を取って旦那様はお札を一枚、のせた。

「……はい」

それをぎゅっと握りこむ。
これを使う事態にならないように祈ろう。

今日はなにかあったときに動きやすいようにと、袴を着付けてくれた。