幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

私から身体を離し、苦笑いした旦那様はいつもの彼に戻っていた。

「人攫いを捕まえなければ、公通に叱られる」

ふふっと嘲笑するように笑い、旦那様がベッドに寝転ぶ。
肘枕をして空いた空間をぽんぽんと叩くので、そこに私も寝転んだ。

「それにやつがれは涼音を喰いたくない。
また喰いそうになったら止めてくれ」

思い詰めた目で旦那様が私を見つめる。

「私は旦那様に食べられるのであれば、かまいませんが」

なぜか旦那様は私を見つめたまま、何度か瞬きをした。

「喰われるんだぞ?
やつがれに。
喰われれば死ぬんだぞ?
それにきっと、痛いぞ?」

「あー……」

死ぬのは別に、怖くない。
ずっと死んでいるんだか生きているんだかわからないように過ごしてきた。
それが終わったところで、別にかまわない。
しかし、あの牙で身を裂かれるのはかなり痛そうだ。
痛いのは嫌だな……。

「なにか、術かなにかで痛くないようにはできないでしょうか……?」

情けなく笑った私を見て、旦那様はなぜか大きなため息を落とした。

「この世に未練はないのか」

「未練……ですか?
そう、ですね……。
ああ。
あの、パルフェとやらとビクトリアンケーキが食べられなくなるのはちょっと、困りますね……」