幾久しくよろしくお願いいたします~鬼神様の嫁取り~

私が感じていたものを気づかれたくなくて、俯く。
つらいのはつらかったが、あれはそれよりもずっと――。
たどり着いた答えに、顔がぼっと火を噴く。

「やつがれもつらかった」

よく見ると旦那様の額には汗がうっすらと浮いていた。

「涼音の匂いがどんどん濃くなっていって、酔ってしまいそうだった」

旦那様の腕が、私を抱き寄せる。

「頭がくらくらして、正気を保つのに必死だった」

めりめりと音がして、旦那様の服が破れていく。
抱きしめる力が強くなり、潰れてしまいそうで苦しい。
身体に当たる、爪が痛い。

「喰ってしまいたい」

私の顔の後ろで、旦那様が大きく口を開くのがわかった。

……とうとう、食べられるのか。

それはそれで本望だ。
旦那様に食べられ、旦那様の血となり肉となり一緒に生きていく。
これ以上の喜びはないけれど。

「旦那様」

私の声で今まさに食いつこうとしていた旦那様が止まった。

「私を食べてしまうのはかまいません。
けれど今、私を食べてしまうと人攫いが捕まえられません。
今しばらく、お待ちいただけませんでしょうか」

「そうだな」