人攫いは日が暮れ、すっかり暗くなってから出るのだと言っていった。
それで旦那様たちは少し早い夕餉のあとに捜索に出ていたし、実際このところも遅い時間に出ている。
しかし初めて旦那様に連れられて買い物に行った日、まだ日暮れ前なのに人攫いは出た。
「そうだな……」
菰野さんの疑問を受け、旦那様は考え込んでいる。
しかしすぐに、菰野さんがひとつの仮定を立ててきた。
「もしかして特別な事情でもあったんじゃないでしょうか」
「特別な事情?」
そうだと菰野さんが頷く。
「危険を冒しても行かざるをえない、なにか特別な……そう、涼音さん、とか」
どうして私の名前が出てくるのかわからず、きょとんとしてしまう。
「ああ」
しかし旦那様は合点がいったのか、私の頭から顎を上げた。
「涼音のにおいに誘われたか」
再び菰野さんがそうだと頷く。
「涼音のにおいは妖にとって、堪らないものだからな」
それを証明するようにすんと、旦那様は私のつむじのにおいを嗅いだ。
「人間である僕にはわかりませんが、あんたがそんなに執着するくらいです。
とてつもなくいい匂いがするんでしょう。
それに堪えられなくなって出てきたのだとしたら、説明がつきます」
それで旦那様たちは少し早い夕餉のあとに捜索に出ていたし、実際このところも遅い時間に出ている。
しかし初めて旦那様に連れられて買い物に行った日、まだ日暮れ前なのに人攫いは出た。
「そうだな……」
菰野さんの疑問を受け、旦那様は考え込んでいる。
しかしすぐに、菰野さんがひとつの仮定を立ててきた。
「もしかして特別な事情でもあったんじゃないでしょうか」
「特別な事情?」
そうだと菰野さんが頷く。
「危険を冒しても行かざるをえない、なにか特別な……そう、涼音さん、とか」
どうして私の名前が出てくるのかわからず、きょとんとしてしまう。
「ああ」
しかし旦那様は合点がいったのか、私の頭から顎を上げた。
「涼音のにおいに誘われたか」
再び菰野さんがそうだと頷く。
「涼音のにおいは妖にとって、堪らないものだからな」
それを証明するようにすんと、旦那様は私のつむじのにおいを嗅いだ。
「人間である僕にはわかりませんが、あんたがそんなに執着するくらいです。
とてつもなくいい匂いがするんでしょう。
それに堪えられなくなって出てきたのだとしたら、説明がつきます」



