「それからなんか、吹っ切れたというか。
それにあの人、僕が憎まれ口叩こうとまったく気にしてないですからね。
それからは楽しくやらせていただいてます」

そう言う菰野さんの顔は晴れ晴れとしていた。

「そんなわけで、特能の彼が無実なのに酷い目に遭うのが許せないんですよ」

「わかりました。
なにかお手伝いできることがあったら言ってください。
私にできることなんて、ないかもしれないですが」

「いいえ。
そう言っていただけるだけで嬉しいです」

貴族の娘だけれど異能を持たない私と、庶民だけれど異能を持つ菰野さん。
正反対だけれど、抱えている悩みは同じな気がした。
旦那様に救われたのも。

「なんの話をしていたのだ?」

ちょうど話が終わったところで、旦那様が部屋から出てきた。

「えー、内緒ですよ」

黙っていてくれと菰野さんが私に目配せする。
私も彼にだけわかるように頷いた。

「やつがれにも内緒とはどういうことだ?」

少し怒って旦那様が私に迫ってくる。

「あー、えっと」

そうだよね、妻が夫以外の人間と秘密を作るなんて許されるわけがない。
しかし、この話は菰野さんが私だからしてくれたんだろうし。

「ん?
ん?」