旦那様も船津さんたちもいなくてちょうどふたりきりだったので、疑問に思ったことを聞いてみる。
正義に駆られているからといえばそうなのかもしれない。
しかし、ここまでの必死さはそれだけではない気がしていた。

「あー、僕は特能なんですよ」

少し考えたあと、曖昧な笑顔でされた告白になんと反応していいのかわからなかった。

「あ、同情は不要です。
それなりに楽しくやってるんで」

苦笑いで指摘され、自分を恥じた。
きっと苦労しているのだろうというのは、私の勝手な想像だ。

「能力がわかったのは十のときです。
川で溺れたんですが、周りの水がさーっと引いて。
これは異能持ちだと騒ぎになりました」

彼は淡々と語っているが、どんな気分だったのだろう。

「まあ、それで貴族の後ろ盾がついて異能特別部隊に入ったわけですが、この性格でしょう?
まー、綱木中尉をはじめ、いろいろと可愛がっていただきました」

皮肉たっぷりに菰野さんがにやりと笑う。
嘲られ、見下され、馬鹿にされたのは想像に難くない。

「しかも命じられたのが、あの人の世話係でしょ?
そりゃもう、事実上の生贄だって腐りましたね」