中尉は身の潔白を叫ぶ犯人に、苛烈な取り調べをおこなっているという。
あの中尉が自分の間違いを認めるはずがない。
自分は正しいと証明しなければいけないので必死なのだろう。
しかし、それで罪を犯していない人間を犯人に仕立て上げるのは違う。

「相手が隠れ特能だからって見下しやがって!」

とうとう菰野さんが怒りにまかせて両の拳でテーブルを叩き、食器が跳ねてガシャンと音を立てた。
さらにグラスが倒れ、こぼれたワインがテーブルクロスに血のような赤いシミを作っていく。

「菰野」

「あ……。
すみません」

旦那様の咎めるような声で少し冷静になったのか、菰野さんは椅子に座り直した。

てきぱきと船津さんたちがテーブル周りを片付けていく。

「まあ、むざむざと竜蔵に無実の人間を殺されても寝覚めが悪いからな。
ちぃと公通に頼んでみる」

「お願いします」

興奮していたからだとは思うが、菰野さんの目の縁が赤くなっているのが気になった。

夕餉が終わり、帰る菰野さんを玄関まで見送る。

「あの、菰野さん。
どうしてそこまで、犯人の無実を証明するのに必死なんですか」