慰めなければと思うが、なんと声をかけていいのかわからない。

「ああっ、くそっ!」

唐突に旦那様が大きな声を出し、私の身体がびくりと震える。

「すまぬ」

しかしすぐに私が怯えているのに気づき、申し訳なさそうに謝ってくれた。

「あんな小物に挑発されたくらいで熱くなるなど、情けない……」

旦那様は嫌そうにはぁーっとため息をついた。

「その。
あんなふうに言われたら、誰だって腹が立つと思います」

旦那様が卑下され、馬鹿にされるのが嫌だった。
あんな最低な人よりも鬼の旦那様のほうが何万倍もいい人だ。

「涼音は優しいな」

うっとりと目を細め、旦那様が私を見る。
その顔から視線を逸らせなくてしばし見つめあっていたところ。

「さっさと帰りますよ!」

バン!と勢いよくドアが開き、菰野さんが入ってくる。
熱い顔で慌てて旦那様から視線を逸らした。

帰りの車の中でもちろん、菰野さんも激怒していた。

「白珱が捕まえられなかった人攫いを捕まえたとあの人、得意げに本部内で吹聴してまわってましたよ」

「そうか」

旦那様は苦笑いしているが、もうそれしかできないのだろう。