騒ぎに気づいたのか、そのうち守衛らしき人が出てきた。

「無駄だよ。
もう閉まってんだ、帰った、帰った」

迷惑だとばかりに中年男性が邪険に私を追い払う。

「そこをなんとか!
なんとかお願いします……!」

このまま帰ってはただでは済まない。
必死になって男の足に縋り付いた。

「そう言われてもね……」

完全に男は困り切り、頭を掻いている。
それを祈る思いで見上げた。
少ししてなにかに思い至ったのか、男が私の顔を見る。

「番頭に頼めばもしかしたら開けてくれるかもしれん」

「番頭さんはどこにいるんですか!?」

「それは……」

あまりにも私に悲壮感が漂っていたからか、男は番頭の家を教えてくれた。

「ありがとうございます!」

お礼もそこそこに再び駆け出す。
番頭は会ってくれたが、私が蒿里の家のものだと言っても、信じてくれなかった。
それはそうだろう、身を包むのはみすぼらしい木綿の着物、しかも転んでドロドロだ。

「嘘じゃありません!
確認してください!」

私がしつこく食い下がるものだから、番頭はとうとう鬱陶しそうにため息をついた。
どうやったら信じてくれるのだろう?