明希乃が来る日の金曜日。昼休みが終わる頃にそれは発生した。
突然、校内がざわつき始めたのだ。生徒達が見つめる方向を見るとそこには他校の制服を着た少女がズンズンと我が物顔で建物内に入ってきたのだ。
その少女の正体なんてすぐに分かってしまった。藤枝明希乃が宣言通り俺が通う学校に来てしまったのだ。
明希乃が通う学校はこんな所なんか比べ物にならない程の進学校で金持ちしか通えない様な所。
その制服を着た少女が来たら誰もが目を向ける。
明希乃は迷う事なく俺が居るクラスへと進んで行く。
勢いよく扉を開けた明希乃は、驚くクラスメイトに目をくれる事なく、俺にくっつく莉愛の方に歩みを進めてきた。
「え?何?なになになに?怖い!怖い!!」
「あ、明希乃さん…」
「言ったでしょ?さとるっち。ちゃんと金曜日に行くって。あ、やっぱりこの子が新島莉愛ちゃんか〜。私の予想通り」
莉愛は怯えた目でこの人のこと知ってるの?と目で訴えてくる。俺はわざと無視した。
「ね、ねぇ?悟ぅ?この人のこと知ってるの?ねぇ?!聞いてるの?!!」
「新島莉愛ちゃん。アンタが"私の悟"の彼女面するアバズレ?顔は可愛いのに性格は本当ブスだよね♪」
「……はぁ?」
「アレ?聞こえなかった?性格ブスさん?クラスメイトのみんなもアンタみたいな馬鹿に騙されるなんてチンパン以下じゃん」
綺麗な顔からは想像できない汚い言葉の数々。
侮辱される莉愛を見るのはどこか楽しかった。
美翔に対して向けてきた歪な顔を次は明希乃に向ける。ブスと言われたのが相当腹が立ったのか莉愛は彼女に掴みがかろうとした。
だが、明希乃の方が一枚上手だった。
明希乃はすぐに椅子を軽々と手に取り、莉愛の顔に向かって殴りつけたのだ。
飛び散るのは莉愛の血と白い歯、そして女子生徒の悲鳴が教室中に響く。
あまりの痛みに床に倒れ込む莉愛を明希乃は蹴りで追撃する。殴られた顔に明希乃の爪先が容赦なく打ち付ける。
莉愛に心酔していた女子達は泣いて怯え、俺以外の男子達も軽く返り血を浴びた明希乃を見て恐怖し動けずにいる。
他のクラスメイト達も惨劇を見に教室に集まる。
蹲る莉愛の髪を乱暴に掴み顔を上げさせる。
「いたいぃ…」
「痛い?美翔さんはこれよりも痛い思いをしたんだよ?これくらい序の口でしょ?そういえばさーアンタ、私のお父さんと取引してる会社のお嬢さんだったよね?」
「え…?なんで、知って…」
「結構前に行事で連れてこられた時にアンタに会ったのよ。妙に媚を売ってギリギリの会社を生き残らせようと頑張るおじさんの隣でキャバ嬢みたいな顔で上目遣いしてたアンタにね」
「なんで、さとるのこと…うぐぅ!!!」
莉愛の傷だらけの顔を床に打ち付ける。何度も何度も。
床は莉愛の血と涙と涎で汚れる。
「悟って呼んでいいのは私と美翔さんだけよ。クソガキ。アバズレの貴様が彼の隣に立っていいわけねーだろが」
低い声で莉愛の耳元で囁く。莉愛は恐怖に完全に支配されてあの腹が立つ声はもう聞くことはなかった。
その時は分からなかったが丁度同じ頃に静流も制裁を受けていたと後で明希乃に教えてもらった。
莉愛は翌日から学校に来なくなった。
莉愛の家の近くに住む生徒が好奇心で様子を見に行くと、家から何かが割れる音と争う声と泣き叫ぶ声が飛び交っていたと笑っていた。
静流もそれ以来姿を見ないらしい。
2週間後に河川敷でボストンバックに入った死体が見つかったらしいがきっと違うだろう。
明希乃は何故か咎められなかった。寧ろ、彼女の襲撃がまるでなかったかの様に扱われた。
残ったのは、顔がぐちゃぐちゃになった莉愛と恐怖におののくクラスメイト。
そして、その光景を見ても美翔は戻ってこないけれど、心が少し救われた気がした俺だけだった。
だが、その救済もすぐに消え去る。
母さんから電話があったのだ。
「悟!!!美翔ちゃんが!!美翔ちゃんがぁあ!!!」
母さんの悲鳴と美翔の名前。この先の言葉を聞くのが嫌だった。だが、現実は逃してくれない。
姿と香りを変えて新しい仲間に出会えた筈の莉愛が死んだという。
しかも彼女の18歳の誕生日に。あっ手間もない男との痴情のもつれで殺されるなんて。
美翔の葬儀の日に彼女の母親からあの手紙を受け取った。
結婚式の前日に見てほしいと美翔は願っていたらしい。
5年後の明希乃との結婚式の前夜にそれを開けることになったのだ。
突然、校内がざわつき始めたのだ。生徒達が見つめる方向を見るとそこには他校の制服を着た少女がズンズンと我が物顔で建物内に入ってきたのだ。
その少女の正体なんてすぐに分かってしまった。藤枝明希乃が宣言通り俺が通う学校に来てしまったのだ。
明希乃が通う学校はこんな所なんか比べ物にならない程の進学校で金持ちしか通えない様な所。
その制服を着た少女が来たら誰もが目を向ける。
明希乃は迷う事なく俺が居るクラスへと進んで行く。
勢いよく扉を開けた明希乃は、驚くクラスメイトに目をくれる事なく、俺にくっつく莉愛の方に歩みを進めてきた。
「え?何?なになになに?怖い!怖い!!」
「あ、明希乃さん…」
「言ったでしょ?さとるっち。ちゃんと金曜日に行くって。あ、やっぱりこの子が新島莉愛ちゃんか〜。私の予想通り」
莉愛は怯えた目でこの人のこと知ってるの?と目で訴えてくる。俺はわざと無視した。
「ね、ねぇ?悟ぅ?この人のこと知ってるの?ねぇ?!聞いてるの?!!」
「新島莉愛ちゃん。アンタが"私の悟"の彼女面するアバズレ?顔は可愛いのに性格は本当ブスだよね♪」
「……はぁ?」
「アレ?聞こえなかった?性格ブスさん?クラスメイトのみんなもアンタみたいな馬鹿に騙されるなんてチンパン以下じゃん」
綺麗な顔からは想像できない汚い言葉の数々。
侮辱される莉愛を見るのはどこか楽しかった。
美翔に対して向けてきた歪な顔を次は明希乃に向ける。ブスと言われたのが相当腹が立ったのか莉愛は彼女に掴みがかろうとした。
だが、明希乃の方が一枚上手だった。
明希乃はすぐに椅子を軽々と手に取り、莉愛の顔に向かって殴りつけたのだ。
飛び散るのは莉愛の血と白い歯、そして女子生徒の悲鳴が教室中に響く。
あまりの痛みに床に倒れ込む莉愛を明希乃は蹴りで追撃する。殴られた顔に明希乃の爪先が容赦なく打ち付ける。
莉愛に心酔していた女子達は泣いて怯え、俺以外の男子達も軽く返り血を浴びた明希乃を見て恐怖し動けずにいる。
他のクラスメイト達も惨劇を見に教室に集まる。
蹲る莉愛の髪を乱暴に掴み顔を上げさせる。
「いたいぃ…」
「痛い?美翔さんはこれよりも痛い思いをしたんだよ?これくらい序の口でしょ?そういえばさーアンタ、私のお父さんと取引してる会社のお嬢さんだったよね?」
「え…?なんで、知って…」
「結構前に行事で連れてこられた時にアンタに会ったのよ。妙に媚を売ってギリギリの会社を生き残らせようと頑張るおじさんの隣でキャバ嬢みたいな顔で上目遣いしてたアンタにね」
「なんで、さとるのこと…うぐぅ!!!」
莉愛の傷だらけの顔を床に打ち付ける。何度も何度も。
床は莉愛の血と涙と涎で汚れる。
「悟って呼んでいいのは私と美翔さんだけよ。クソガキ。アバズレの貴様が彼の隣に立っていいわけねーだろが」
低い声で莉愛の耳元で囁く。莉愛は恐怖に完全に支配されてあの腹が立つ声はもう聞くことはなかった。
その時は分からなかったが丁度同じ頃に静流も制裁を受けていたと後で明希乃に教えてもらった。
莉愛は翌日から学校に来なくなった。
莉愛の家の近くに住む生徒が好奇心で様子を見に行くと、家から何かが割れる音と争う声と泣き叫ぶ声が飛び交っていたと笑っていた。
静流もそれ以来姿を見ないらしい。
2週間後に河川敷でボストンバックに入った死体が見つかったらしいがきっと違うだろう。
明希乃は何故か咎められなかった。寧ろ、彼女の襲撃がまるでなかったかの様に扱われた。
残ったのは、顔がぐちゃぐちゃになった莉愛と恐怖におののくクラスメイト。
そして、その光景を見ても美翔は戻ってこないけれど、心が少し救われた気がした俺だけだった。
だが、その救済もすぐに消え去る。
母さんから電話があったのだ。
「悟!!!美翔ちゃんが!!美翔ちゃんがぁあ!!!」
母さんの悲鳴と美翔の名前。この先の言葉を聞くのが嫌だった。だが、現実は逃してくれない。
姿と香りを変えて新しい仲間に出会えた筈の莉愛が死んだという。
しかも彼女の18歳の誕生日に。あっ手間もない男との痴情のもつれで殺されるなんて。
美翔の葬儀の日に彼女の母親からあの手紙を受け取った。
結婚式の前日に見てほしいと美翔は願っていたらしい。
5年後の明希乃との結婚式の前夜にそれを開けることになったのだ。



