君と出会ったのは桜が咲く頃だった。高校に入学して間もない、左も右も分からない。そんな時だったね。元気に君は、言った。

「おはよう。そのゲームおもろいよね。」

 驚き過ぎて言葉が出なかった。それでも君は根気強く話しかけてくれて、そのうち僕も一言二言返せるようになって…………。距離が縮まるのも時間の問題だった。他愛のない話。それが幸せで、それ以上の幸福はないと思える程だった。けれど君がふと見せる暗い、それでいて影がある表情はとても魅力的でミステリアス。僕はどうしてもそこに触れてしまいたくなった。けど……けれど触れてはいけないような気がして……。かくいう僕も触れてほしくない影と呼べる部分がある。だからこそ、触れることは最大の禁句とわかっていた。僕達の間には近いようで遠い心の距離があった。