「あいだっ!!」
私の名前は間宮幸。「幸」って書いてゆきって読む。いっつも珍しいって言われる。確かに「幸」だと私も”さち”って読みたくなる。そんな私はたった今電柱にぶつかった。”普通の人”なら電柱にめったにぶつからないだろう。そう、私はその”普通の人”じゃないのだ。私は目が見えない。幼い頃高熱を出して運び込まれた病院で検査やら何やらを受け1日入院した。翌日には奇跡的に熱も下がり復活した。でも、何かがおかしかった。目を開けても何も見えなかった。真っ暗な世界。お医者さんによると私は高熱により頭に血が上りすぎて失明してしまったんだそう。そっからが地獄の始まりだった。何も見えないから歩くのも危険。だからずっと車椅子生活だった。熱は下がっていた為、退院した。しかし目が見えないのには変わりはない。壁にぶつかったり家具にぶつかるのは日常茶飯事だ。もう慣れてる。しかし慣れてると言っても痛いものは痛い。
「大丈夫?」
声をかけられた。男の人の声だった。
「すっごい声出してたけど、平気?」
「え、、、」
「え、、、って、すっごい声だったよ?」
「「あいだっ!!」」
クスクスッ。
自分の声が脳内で再生されたとともに男性の小さい笑い声が聞こえた。
「なっ、なんで笑うんですか。」
「なんでって、面白いんだもん。あいだっ!!って」
なんとなく居心地が良かった。笑ってくれて、普通に話してくれて、眼のことにも触れないで、皆んなと普通のように話してくれる、彼が居心地が良かった。
「あ、頭大丈夫?ゴンっていいすっげぇ音してたよ。」
クスクスッ。
また笑い声が聞こえた。彼はどんな見た目をしててどんな格好をしているのだろうか。私は目が見えなくても”音”は見える。鳥が鳴いている音、子どものはしゃぎ声、人の歩く音、車の走行音。この街には沢山の音が溢れている。彼の笑い声も音のうちの一つだ。
「大丈夫です。」
「一人で行ける?」
クスクスッ。
彼は笑いながら手を差し伸べた。私は目が見えない代わりに、音が見えるのもう一つに、気配を察知できるようになった。今回の電柱事件は前に人を察知して避けたらすぐに電柱の気配を感じ避けることが出来なかったのだ。これは完全に私の把握不足だった。
「大丈夫です。私一人で行けますんで。」
「わっ、」
ドテッ。
「えっ、大丈夫?なんでそんなに転ぶ、、、ん、だ、、、あ。」
何かを察しられた。多分目のことなのかな。
「目、もしかしてだけど見えない?」
「そうですけど、何か。」
「え。まじで?」
「まじですけど、何か?」
初めて彼の間抜けそうな声が聞こえた。
「もしかしてですけど、冗談混じりで?」
「いや、そんな事は無い。そうだ、お前の名前は?」
彼はキリッと言い放った。いや、そこカッコつけるところじゃないです。と心のなかで思いながら私は答えた。
「間宮幸っていいます。幸って書いてゆきって読みます。」
名前を聞かれるのは初めてだった。そりゃ、名前を呼ばれたことは何回かあるけど、大体名札を見て呼ばれる。名前を間違われたことだってある。幸なのに幸ちゃんって呼ばれたことだってある。名前を間違われたその時から名前を聞かれたときは読み方も答えようと心がけていたけど、そもそも名前を聞かれなかった。
「俺の名前は小室幸。よろしく。って、え?」
「え?」
私と小室くんの声が重なった。
「名前、同じだ。」
「ほ、ほんとだ、きせk....。」
キーンコーンカーンコーン。
朝の会開始のチャイムが鳴った。まずい、遅刻だ。
「やっべ遅刻だ!!」
やってしまった。私は生まれて一度も遅刻をしたことがなかったのだ。そのおかげで私の中では何回連続遅刻をしないかチャレンジをしていたのだ。まぁ何回目かは数えていないが、今まで遅刻をしたことなかったから連続を成し遂げていた。でも、今はそんなことを考えている暇など無い。今は教室にいち早く向かわなければ。
「す、すいません!!遅れました!!!」
「おお、間宮が遅刻なんて、珍しいな。牧野、机まで付き添ってやれ。」
私は目が見えない。なのでいつも友達の杏奈に机までつきそってもらっている。
「杏奈、いつもありがとうね。」
「ううん。だって私達友達だもん。」
友達ってなんだろう。同情できる人?話せる人?一緒にいて楽しい人?分からない。私の周りには色んな人がいる。
自慢をする人。おとなしい人。明るい人。誰とでも話せる人。目が見えて、可愛い人。ひときわ目立ったいる人。そして私。
私はその集団の中にいる。
「あれ、お前、間宮?」
知っている声に話しかけられた。誰だっけ、いつかあった人、男の人、一緒にいて居心地がいい人。誰だっけ、上うまく思い出せない。
「・・・。あ、俺。小室幸。朝会った。」
「あぁ、小室くん、なんで小室くんがここにいるの?ここ1組だよ。」
「いや、俺1組。」
「え。」
なんだろう、この少女漫画みたいな展開。きっと少女漫画ならありえるだろう。いな、これは現実だ。残念ながら。しかも隣の席だ。
こんなんで授業がまともに出来るだろうか。いつもの授業さえまともに出来ないのに彼が隣りにいると分かったら更に集中できないだろう。今更どうしろというのだ。気にしないで授業を受ける?そんなの絶対に出来ないだろう。じゃあどうすれば...。
キーンコーンカーンコーン。
二時間目の終わりのチャイムが鳴った。
「これで二時間目を終りにする。各自ノートに板書をするように。」
いつの間にか二時間目が終わっていた。なんにも授業を聞いていなかった。どうしよう...。
「幸ちゃん、遅刻なんて珍しいね、どうしたの?」
この子は、牧野杏奈。私の唯一の親友だ。朝、机まで付き添ってくれたり、一緒に帰ってくれたり一緒に遊んでくれたり。"普通の子"として扱ってくれている。そんな杏奈と一緒にいると居心地が良かった。小室くんも、普通の子として扱ってくれた。分かったんだ。私は普通の人として扱ってくれる人と一緒にいたいのだ。私は”普通”になりたかった。普通に高校に行って普通に友だちを作る。普通の暮らしに憧れていたのだ。"普通"ってなんだろう。目が見える事?多分それが普通なのだと思う。目が見えないところから普通じゃないと思う。
「いやー、その今日電柱にぶつかっちゃって。それで少し遅くなっちゃったんだ。」
「わぁ、それは災難だったね...。ごめんね、一緒に行けなくて。」
「ううん。そんな事ないよ。私の不注意だもの。」
でも今回のわたしの不注意とはいえ、電柱にぶつかるのは初めてだ。そりゃ、目が見えなくなった当初は家具にはよくぶつかっていた。けれど、電柱にはぶつからなかった。外にそもそも出てなかったからだ。外に出るとしても車椅子だった。ほとんど私は部屋に引きこもりっぱなしだった。小中は盲学校に通っていた。けどうまく馴染めなかった。確かに周りは話が通じる人だ。だって全員見えないから。けど馴染めなかった。高校は両親や先生の協力で普通の高校にぎりぎり入れた。
私の名前は間宮幸。「幸」って書いてゆきって読む。いっつも珍しいって言われる。確かに「幸」だと私も”さち”って読みたくなる。そんな私はたった今電柱にぶつかった。”普通の人”なら電柱にめったにぶつからないだろう。そう、私はその”普通の人”じゃないのだ。私は目が見えない。幼い頃高熱を出して運び込まれた病院で検査やら何やらを受け1日入院した。翌日には奇跡的に熱も下がり復活した。でも、何かがおかしかった。目を開けても何も見えなかった。真っ暗な世界。お医者さんによると私は高熱により頭に血が上りすぎて失明してしまったんだそう。そっからが地獄の始まりだった。何も見えないから歩くのも危険。だからずっと車椅子生活だった。熱は下がっていた為、退院した。しかし目が見えないのには変わりはない。壁にぶつかったり家具にぶつかるのは日常茶飯事だ。もう慣れてる。しかし慣れてると言っても痛いものは痛い。
「大丈夫?」
声をかけられた。男の人の声だった。
「すっごい声出してたけど、平気?」
「え、、、」
「え、、、って、すっごい声だったよ?」
「「あいだっ!!」」
クスクスッ。
自分の声が脳内で再生されたとともに男性の小さい笑い声が聞こえた。
「なっ、なんで笑うんですか。」
「なんでって、面白いんだもん。あいだっ!!って」
なんとなく居心地が良かった。笑ってくれて、普通に話してくれて、眼のことにも触れないで、皆んなと普通のように話してくれる、彼が居心地が良かった。
「あ、頭大丈夫?ゴンっていいすっげぇ音してたよ。」
クスクスッ。
また笑い声が聞こえた。彼はどんな見た目をしててどんな格好をしているのだろうか。私は目が見えなくても”音”は見える。鳥が鳴いている音、子どものはしゃぎ声、人の歩く音、車の走行音。この街には沢山の音が溢れている。彼の笑い声も音のうちの一つだ。
「大丈夫です。」
「一人で行ける?」
クスクスッ。
彼は笑いながら手を差し伸べた。私は目が見えない代わりに、音が見えるのもう一つに、気配を察知できるようになった。今回の電柱事件は前に人を察知して避けたらすぐに電柱の気配を感じ避けることが出来なかったのだ。これは完全に私の把握不足だった。
「大丈夫です。私一人で行けますんで。」
「わっ、」
ドテッ。
「えっ、大丈夫?なんでそんなに転ぶ、、、ん、だ、、、あ。」
何かを察しられた。多分目のことなのかな。
「目、もしかしてだけど見えない?」
「そうですけど、何か。」
「え。まじで?」
「まじですけど、何か?」
初めて彼の間抜けそうな声が聞こえた。
「もしかしてですけど、冗談混じりで?」
「いや、そんな事は無い。そうだ、お前の名前は?」
彼はキリッと言い放った。いや、そこカッコつけるところじゃないです。と心のなかで思いながら私は答えた。
「間宮幸っていいます。幸って書いてゆきって読みます。」
名前を聞かれるのは初めてだった。そりゃ、名前を呼ばれたことは何回かあるけど、大体名札を見て呼ばれる。名前を間違われたことだってある。幸なのに幸ちゃんって呼ばれたことだってある。名前を間違われたその時から名前を聞かれたときは読み方も答えようと心がけていたけど、そもそも名前を聞かれなかった。
「俺の名前は小室幸。よろしく。って、え?」
「え?」
私と小室くんの声が重なった。
「名前、同じだ。」
「ほ、ほんとだ、きせk....。」
キーンコーンカーンコーン。
朝の会開始のチャイムが鳴った。まずい、遅刻だ。
「やっべ遅刻だ!!」
やってしまった。私は生まれて一度も遅刻をしたことがなかったのだ。そのおかげで私の中では何回連続遅刻をしないかチャレンジをしていたのだ。まぁ何回目かは数えていないが、今まで遅刻をしたことなかったから連続を成し遂げていた。でも、今はそんなことを考えている暇など無い。今は教室にいち早く向かわなければ。
「す、すいません!!遅れました!!!」
「おお、間宮が遅刻なんて、珍しいな。牧野、机まで付き添ってやれ。」
私は目が見えない。なのでいつも友達の杏奈に机までつきそってもらっている。
「杏奈、いつもありがとうね。」
「ううん。だって私達友達だもん。」
友達ってなんだろう。同情できる人?話せる人?一緒にいて楽しい人?分からない。私の周りには色んな人がいる。
自慢をする人。おとなしい人。明るい人。誰とでも話せる人。目が見えて、可愛い人。ひときわ目立ったいる人。そして私。
私はその集団の中にいる。
「あれ、お前、間宮?」
知っている声に話しかけられた。誰だっけ、いつかあった人、男の人、一緒にいて居心地がいい人。誰だっけ、上うまく思い出せない。
「・・・。あ、俺。小室幸。朝会った。」
「あぁ、小室くん、なんで小室くんがここにいるの?ここ1組だよ。」
「いや、俺1組。」
「え。」
なんだろう、この少女漫画みたいな展開。きっと少女漫画ならありえるだろう。いな、これは現実だ。残念ながら。しかも隣の席だ。
こんなんで授業がまともに出来るだろうか。いつもの授業さえまともに出来ないのに彼が隣りにいると分かったら更に集中できないだろう。今更どうしろというのだ。気にしないで授業を受ける?そんなの絶対に出来ないだろう。じゃあどうすれば...。
キーンコーンカーンコーン。
二時間目の終わりのチャイムが鳴った。
「これで二時間目を終りにする。各自ノートに板書をするように。」
いつの間にか二時間目が終わっていた。なんにも授業を聞いていなかった。どうしよう...。
「幸ちゃん、遅刻なんて珍しいね、どうしたの?」
この子は、牧野杏奈。私の唯一の親友だ。朝、机まで付き添ってくれたり、一緒に帰ってくれたり一緒に遊んでくれたり。"普通の子"として扱ってくれている。そんな杏奈と一緒にいると居心地が良かった。小室くんも、普通の子として扱ってくれた。分かったんだ。私は普通の人として扱ってくれる人と一緒にいたいのだ。私は”普通”になりたかった。普通に高校に行って普通に友だちを作る。普通の暮らしに憧れていたのだ。"普通"ってなんだろう。目が見える事?多分それが普通なのだと思う。目が見えないところから普通じゃないと思う。
「いやー、その今日電柱にぶつかっちゃって。それで少し遅くなっちゃったんだ。」
「わぁ、それは災難だったね...。ごめんね、一緒に行けなくて。」
「ううん。そんな事ないよ。私の不注意だもの。」
でも今回のわたしの不注意とはいえ、電柱にぶつかるのは初めてだ。そりゃ、目が見えなくなった当初は家具にはよくぶつかっていた。けれど、電柱にはぶつからなかった。外にそもそも出てなかったからだ。外に出るとしても車椅子だった。ほとんど私は部屋に引きこもりっぱなしだった。小中は盲学校に通っていた。けどうまく馴染めなかった。確かに周りは話が通じる人だ。だって全員見えないから。けど馴染めなかった。高校は両親や先生の協力で普通の高校にぎりぎり入れた。
