「ちょ、いったい……なんなの?」

 我に返ったアーシェルは椅子から立ち上がりハルキュアのそばまできた。

 「ごめんなさい……身の危険を感じたので、ツイやってしまったわ」
 「やったって……まさか死んじゃいねえよな?」

 心配になりザヴェルは立ち上がりライゲルの近くまでくる。

 「気絶しているだけです。そうですね……何処かに寝かせておいた方が」

 何処かにいい場所はないかと思いハルキュアはギルド内を見回した。

 「奥の部屋に寝かせるといいわよ」

 そう言いながら受付嬢のヒナギクがハルキュアへと歩み寄ってきた。
 それを聞きザヴェルとアーシェルは軽く頭を下げる。その後ザヴェルはライゲルを担ぎギルドの奥にある部屋へ向かう。
 そのあとをハルキュア、カデリウス、ピュアル、アーシェル、ヒナギクの五人が追いかける。

 ☆★❈★☆

 ここはギルドの奥にある部屋。
 ザヴェルはヒナギクが用意した簡易ベッドにライゲルを寝かせた。

 「すまない……ライゲルが酷いことを言って」

 そう言いながらザヴェルはハルキュアの方を向き軽く頭を下げる。

 「そのことは問題ないわ。それよりも、さっき話していたダンジョンのことを聞きたいのだけど」
 「ハルキュア、それって【紅穴の迷宮(こうけつのダンジョン)】のことかしら?」
 「はい、そうです。三人の話が偶々聞こえてきて気になったので」

 それを聞きヒナギクは、ニコリと笑みを浮かべる。

 「もしかして……依頼を受けたいとか思っていませんよね?」
 「思っています!」

 どうだと言わんばかりに胸を張りハルキュアは真剣な顔でヒナギクをみた。

 「なるほど……ですがアーシェルさん達が受けた依頼って、そんなに興味を持つようなものだったかしら?」
 「ヒナギクさん、アタシ達の受けた依頼は穴モグラを倒して毛皮を予定数もってくる……だけど、それが……」

 つらくなりアーシェルは言葉が出なくなる。
 それを察知したザヴェルはダンジョンで何があったのかを説明した。

 「えっ、ベルゼンさんとサーシェルさんが……魔獣に殺された!? でも変ね……今まで、そんな巨大で狂暴な魔獣が出たって事例を聞いていないわ」
 「でも俺とアーシェル、ライゲル……ベンゼンにサーシェルも魔獣と戦って……」

 思い出してしまいザヴェルは、つらさの余り肩を落とし俯いている。

 「その魔獣って何階層に居たんですか?」

 ふと気になりカデリウスは問いかけた。

 「地下五階層だ。あんな魔獣がいるのが分かっていれば……もっと装備を強化して行っていた」

 目を覚ましライゲルは、そう言い涙を流している。

 「最下層は何階なの?」
 「確か……一階ごとに広いけど、それほど深くなくて……地下七階層までだったと思いますよ」
 「ヒナギクさん、そうなんですね。最下層には誰も行ったことがないんですか?」

 そうカデリウスが問うとヒナギクは首を横に振った。

 「いいえ、あるわ。地下七階層は、ニードルワームの住処になっているのよ。だから定期的に討伐の依頼書を発行しています」
 「ニードルワームか……それほど大きな魔物じゃない。だけど群れを成すので厄介、だわ」
 「そうなのです。そうですね……。先ずは、なぜ地下五階層に……その魔獣が現れたのかを調べなければ」

 そう言いヒナギクは無作為に一点をみつめ思考を巡らせる。

 「それって依頼にするのですか?」
 「ハルキュア、そうなるわ。ですがAランク以上でなくては無理よ」
 「それなら……」

 バッグの中からスタンプカードと予定数の鉱石と黄色ネズミの牙をハルキュアは取り出した。

 「そういう事なのね。これでAランクにあがれる……じゃあカデリウスとピュアルもかしら?」

 そう言われカデリウスとピュアルはバッグの中からスタンプカードと依頼されたものを出しヒナギクにみせる。

 「二人も依頼を熟したようね。じゃあ依頼完了のスタンプを押したらAランク用のカードを渡さないと。だけど今は、このことを依頼とするかギルマスに確認します」

 それを聞きハルキュア、カデリウス、ピュアル、アーシェル、ライゲル、ザヴェルは頷いた。
 それを確認するとヒナギクは部屋を出てギルドマスターの部屋へ向かう。
 その間ハルキュア達六人は、この部屋で話をしながら待機していたのだった。