ここはべマルギの町のギルド。
 建物の中に入って来たハルキュアとカデリウスとピュアルは何やら騒がしいと思い声のする方へ視線を向けた。
 そこには見慣れない男女三名の冒険者パーティーが居て揉めている。

 「どうしたんでしょうか?」
 「喧嘩をしているみたいね」
 「ウン、ミタコトナイヒトタチダヨ」

 なんで揉めているのか気になり三人は、その冒険者たちの近くまで行きテーブル席に座った。

 「本気で言っているの? アタシ達よりも強いベルゼンとサーシェルがやられたのよ」

 そう言い放ち金髪で黒のメッシュが目立つ猫の獣人の女は目を吊り上げ怒っている。

 「まさか……怖気づいたのか?」

 如何にも真面目そうな雰囲気の男性はグレイの髪をかき上げ猫の獣人の女を目を細めみた。

 「ライゲル……アーシェルの言う通りだ。あの洞窟……【紅穴の迷宮(こうけつのダンジョン)】がAランクでも行ける場所だって、あの魔獣相手じゃ無理だ」

 格闘家なのか体格が良く濃い緑の短髪の男性は神妙な面持ちで目の前の二人を順にみる。

 「それならザヴェル。誰か強い仲間を入れればいい」
 「アタシ達よりも……いいえ、ベンゼルよりも強い者なんて早々簡単にみつかる訳ないわ」
 「ああ……悔しいが。諦めた方がいいと思うぜ」

 そう言われるもライゲルは納得できない。

 「敵をとりたいと思わないのか?」
 「ライゲル……アタシだって敵をとりたい。でもアタシ達じゃ何もできずに無駄死にするだけよ」
 「その通りだ。そんなことよりも二人の墓を作ってやろうぜ」

 そう言われライゲルは、クッと下唇を噛み無作為に一点をみつめる。

 「そんなのは分かっている。だが……もういい! 俺だけで冒険者を募って、あの魔獣を倒す」

 そう言い放ちライゲルは立ち上がった。

 「待って! ライゲル……」

 止めようと思いアーシェルはライゲルの腕を掴もうとする。

 「その話、ワタシにも聞かせてもらえるかしら?」

 ライゲルの行く手を遮るようにハルキュアは立ちはだかった。

 「フゥー……話すのはいいだろう。だが子供に熟せるよな仕事じゃない」

 馬鹿にしたような目でライゲルはハルキュアをみる。

 「十五で、子供じゃないわ」
 「フンッ、話にならん」

 ドケと言わんばかりにライゲルはハルキュアを手で払おうとした。それと同時にライゲルは宙を舞い床に落下する。
 そうハルキュアは瞬時に動き、ライゲルの足を払ったあと軽々と投げ飛ばしたのだ。
 それをみていたアーシェルとザヴェルは余りにも速くて何が起きたのか分からず、ポカーンっと口を開けていた。
 片やカデリウスとピュアルは笑みを浮かべながらハルキュアのそばにくる。

 「ハルキュア……勝手な行動をしないでください」
 「ヤッパリ、ハルキュアハツヨイネ」
 「そうね……ごめんなさい。だけど、ちゃんと話を聞きたかったから」

 そう言いながらハルキュアは中腰になりライゲルを覗きみた。