「クスッ……ワタシが誰かって? 超絶美少女のハルキュアよ!」

 どうだ! と云わんばかりに腰に手をあて胸を張り十五歳の少女であるハルキュア・ロイズは、ニカッと笑みを浮かべた。
 因みに、このハルキュアの中身は四十五歳のオッサンでリュコノグル国の英雄と云われたハルリオン・ヴェグスである。

 「そんなことを聞いてなどいない! なんで私の書斎に居るのだ?」

 ピクピクと顔を引きつらせマールエメス国の大臣カンルギ・ザベテは、ハルキュアを睨んだ。

 「勿論、御掃除ですわ」
 「掃除……なるほど侍女という訳か。だが、ここの掃除は決まった者にやらせている。知らずに入ったのなら、サッサと出てゆけ!!」
 「そうでしたのね……申し訳ありませんでしたわ。では失礼いたします」

 そう言いハルキュアは一礼をして部屋から通路へとでる。

 (危なかった……折角もぐり込めたってぇのにバレたんじゃ意味ねぇからな。ハァー……どうせなら裏の仕事をしたかった。
 なんでオレとピュアルだけ城の下働きなんだよ! カール……まあ一人でも大丈夫か。アイツは、ガキじゃねぇしな……)

 そう思いながらハルキュアは別の部屋の掃除へと向かった。

 ――そして時は一週間前へと遡る……――

 ここはマールエメス国にあるベバルギの町。街路には人が疎らにしか居らず賑わっていない。

 あれからハルリオンはハルリアから名前をハルキュア・ロイズと変え名乗っていた。
 そして偽名をカデリウス・マルビと変えたカールディグスと一角兎の獣人ピュアル・ゼアと共にベバルギの町でギルドの依頼を熟していたのである。

 それから二ヶ月が経った現在ハルキュアとカデリウスとピュアルは、ギルドに向かうため街路を歩いていた。

 「やっと今日でAランクに上がれる」

 嬉しくて笑みを浮かべるとハルキュアは遠くを見据える。
 良くみると銀色で赤のメッシュの短かった髪も伸びて、オレンジ色のリボンで二つに縛っていた。

 「ええ、これで討伐や高難易度の依頼を受けられますね」

 誰に似たのかカデリウスは、ワクワクしている。
 髪が伸びて軽く一つに縛っている。ん? 誰かに似ている気もするのだが……。

 「ボクモ、タタカエル?」

 目を潤ませながらピュアルは二人を順にみた。

 「ピュアルも戦えるが強い魔物や魔獣は、まだ無理だ」
 「ソウカ……ザンネン……」
 「ですが……以前よりも戦えるようになってきたから弱い魔物や魔獣であれば大丈夫だと思いますよ」

 それを聞きピュアルは嬉しくなり喜び笑みを浮かべる。

 「モットツヨクナッテ……ムラノミンナノカタキヲウツンダ。ウウン……ソレダケジャナイ、ドレイニサレタナカマヲタスケル」
 「そうだな。元々ピュアルは、それが目的だった。オレとカールの目的はマールエメスに潜入して探りを入れることだ」
 「そうなりますね。ですが、まだ今のランクでは無理……」

 何時になったらSにあがれるんだと思い三人はスタンプカードをみた。

 「まあ……焦らずにいくしかねぇだろうな」
 「ええ、そうですね……」

 ハァーっと溜息をつきカデリウスは遠くを見据える。
 そうこう話をしているうちにギルドの前まで来ていた。

 「さて、着いたぞ」

 そう言いハルキュアは建物の中に入っていき、そのあとをカデリウスとピュアルが追いかける。