「全く、朝から。」
私は天野川光輝。清香が教室へ入っていくのを見届けた後、私も自分の教室へ向かう。私は知っている。あの話し方もあの笑顔も全部嘘だと知っている。五月雨清香はとんでもない嘘つきだと知っている。放課後が待ち遠しかった。清香の本性を拝めるのはそこだけだから。親友や先輩、そして家族にまで嘘で覆い隠しているものが僕の前では仮面が取れたかのように暴かれる。婚約者の僕の前だけ清香は素直になれるのだ。もちろん僕も。少し足を早め長い廊下を進んだ。