帰り道、二人並んで歩く。清香はもう変装を解いていた。横顔が見える。
「私の婚約者は、格好良くて、強くて、可愛くて、頭が良くて、おまけに美しい。私は本当に恵まれているな。」
私の独り言に清香が頬を赤らめながら振り向く。
「あら、それなら私の婚約者も、格好良くて、強くて、可愛くて、頭が良くて、周りが見れて、優しくて、おまけに美しいわ。本当に私の自慢の婚約者よ。こんなにも完璧で私の事を愛してくれる人なんて、この世にいないでしょうね。」
清香の言葉に顔が熱くなってくる。
「清香、こっちを向いてくれないか。」
「あら、何ですの。」
清香が私の方を向いた瞬間に唇と唇をくっつける。離れないようにしっかりと抱きしめる。どのくらいの時間こうしていたか分からない。清香の柔らかい唇が徐々に遠ざかる。
「あら、強引なこと。」
いつもの口振りは話す清香の頬が紅色に染まっている。
「愛しているよ、清香。」
「あら、私も愛しているわ、光輝さん。」
私が微笑みかけると清香も答えるようにして微笑む。たとえこの世界が偽りだらけでも、この言葉だけは嘘じゃない。