清香と別れてから私も家に帰り、はしたなくベッドに倒れ込む。
「はぁ、清香。」
清香を怒らせてしまった。小さい頃は私も清香も良い子で言い合う事なんて無かった。あそこまで清香の機嫌が悪くなるなんて、私は何て事を言ってしまったのだろうか。ひたすら自問自答を繰り返していると一本のメッセージが入った。
「今日の夜いつもの時間にいつもの場所。全員強制。」
吉からだった。だが、様子が少しおかしかった。いつもなら、誰が来なかったとしても気にすることなく喧嘩をしに行く。少しの疑問を無理矢理飲み込んで準備を始めた。
 いつもより遅く集い場に来た。全員強制集合だが、いつもよりも人数が少ない気がした。きょろきょろとあたりを見渡すと清香の姿が合った。恐る恐る近づいていると目が合い、清香もこっちに近づいてきた。
「今日はごめん。気に障るような事言って、本当にごめん。」
清香が横に来るなりすぐさま謝罪を述べる。
「ああ、あたしもすまんかった。つい、ちょっとだけ、あの、あまりてめぇにだけは知られたくない事だったから。」
珍しく狼狽えながらもごもごと清香も謝ってきた。
「ところで今日は何でこんなに人が少ないんだ。」
「変だな。…あの時と似てる気がする。」
私は清香の言葉がよく分からず、深く尋ねようとした時、吉がステージに登っていく姿が見えた。
「たく、これしか集まらなかったのかよ。」
少し機嫌が悪いのか、眉間にシワを寄せぶっきらぼうに吐き捨てた。
「宣戦布告された。相手は沙羅曼蛇(サラマンダー)だ。」
沙羅曼蛇と言うチーム名を聞いた瞬間に仲間たちの顔が曇った。
「戦いたく無い奴いるか。」
吉の問いかけに数人が手を挙げる。
「よし、今手を挙げたお前ら全員白虎から退団しろ。今までサンキュ、これ以上お前らのこと無駄に巻き込みたくねぇから。お前ら、これから先も元気でやれよ。」
手を挙げた全員が荷物をまとめて出口に歩いて行った。私は清香が手を挙げ無かったため、もちろん手を挙げ無かった。
「なぁ、仮面の使徒よぉ。沙羅曼蛇って何なんだよ。」
「お前と仮面の使徒が始めて出会った理由だよ。」
その説明だけで分かった。天野川光輝と仮面の使徒が始めて出会い、私がヤンキーになることを誓った原因を作ったチーム。
「残った奴らぁ、全員やる気あるかァ。」
「うっす。」
吉の問に大きな声でメンバーが答える。もう二度とあの惨劇を繰り返さないように。
「白虎ァ、総員156名一斉に出撃だァ。」
吉の声が部屋中に響き渡った。