「初めての喧嘩で緊張してるのか。」
道中清香が話しかけてきた。
「ああ、少しだけ。」
「そうか。まさか、お前がこの短時間であそこまで成長しているとは思わなかった。」
「先輩たちの教え方が美味かったんだ。いろいろ教わったぜ。」
私がそう言うと清香は無言で頷いた。そして
「来るぞ。」
と小さな声で囁いた。前方から罵声や戦闘音がする。本当の喧嘩とはこう言うものらしい。
「行くぞ、漆黒の太陽。くれぐれもあたしから離れるなよ。」
そう言い放ち、清香は急いで前方へ飛んでいく。その後ろを私も追いかける。
「おい、光線。てめぇらよくも俺らの仲間傷つけたな。」
吉の声がする。その後は聞いたことのない人の声が聞こえた。
「何言ってるんだよ。この年になってお友達ごっこなんて気持ちわりぃ。おい、お前ら。今日こそ白虎(ホワイトタイガー)との決着をつけるぞ。気合い入れろォ。」
「あいつは光線の総長だ。ぜってぇあいつにだけは近づくなよ。」
清香が走りながら話しかけて来た。白虎と言うのはうちのチーム名だ。「白虎って何かダサくないか」と心の中で思っていると、知らぬうちに清香は戦いに加わっていた。清香は屈強な男共に怯むことなくボッコボコにしていく。私もすぐに援護に入った。
「うーら」
「おらおらァ」
「ぶっ潰してやるゥゥゥ」
「かかってこいやァァァ」
 数時間後、なんとか光線に勝つことが出来、光線は同盟を求めて来た。
「頼む、俺らも白虎に入れてくれ。」
「お前らァ、どう思う。」
吉が大声で仲間に聞く。
「今日の敵は明日の友だろォ。」
白虎の私以外のメンバー全員が大声で答えた。
「漆黒の太陽、これはチームが掲げている目標みたいなものだ。勝ったとしても、威張る事無く、同盟を求めるならば結び仲間となる。たとえ負けたとしても、反逆などは考えること無く新しい仲間を大切にしよう。そう言う考え方がこのチームを形作っている。お前もこれだけは破るなよ。」
清香が一度言葉を切る。
「それと、誰か一人でも戦えるのならまだ白虎が負けていない。最後の一人まで諦めずに戦う。それがルールだ。」
周りを見渡すとさっきまで殴り合っていた人達が仲良く話し始めている。これが、このチームの日常らしい。私もここにいる以上、この形は守らないといけないと覚悟を胸にしまった。