連れてこられたのは広い部屋だった。その真ん中のステージに清香は立っていた。これから清香とゴツいムキムキ男の対戦が始まるらしい。
「見てろ。あの、デカいやつは一番隊の隊長だ。」
一番隊の隊長と言うのは総長、副総長の次に強い人らしい。
「そんな…。仮面の人は大丈夫何ですか。」
恐る恐る尋ねる私に吉は笑った。
「きっと大丈夫だ。さっきも言った通り仮面の使徒は強いからなァ。」
吉がそう言うなり対戦が始まる。一番隊隊長が清香に向かって思いっ切り拳を振るう。思わず目を細めてしまったが、清香は余裕で回避していた。その後も攻撃を回避しつつ、少しずつ相手にダメージを蓄積させている。
「仮面はなァ、避けることに関してはチーム一番なのだが、体が華奢すぎて、重い攻撃が入らないんだよなァ。」
総長が清香の動きを見ながら解説する。
「では、私が仮面の人の助けになるためには、攻撃力が必須と言うわけですね。」
「ああ、よく分かってんじゃねぇか。」
私たちが話をしていると後半になるにつれ清香が入れたダメージが聞いてきたのか、相手の動きにばらつきが出て来てどんどんてきとうになった。その隙だらけの防御を素早く突破して、清香は最後の一撃を決めた。
「やっぱり、仮面って只者じゃねぇよな。」
「俺も仮面みたいになりてぇ。」
清香は周りの男達からの歓声を聞きながらステージを降りた。
「ほら、言ったろ。仮面があいつに負けるはずがないって。…次は、お前の番だぞ。」
そう言い、私の手を掴みステージへ引っ張られるようにして運ばれた。
「ちょっ、吉さん。どうして、いきなりそいつをドームやらせるんだ。」
清香がステージに駆け寄って来た。
「仮面よォ。俺はこいつに戦闘を教える。昔、仮面にもやってあげただろう。」
「そ、それじゃあ…。」
「ああ、まだ弱っちぃから、正式では無いが仮加入出来るぞ。で、お前はどうしたいんだァ。」
今の会話を聞いていたメンバー全員が私を見つめた。
「えっと、夜露死苦お願いします。」
「ははっ、俺様こいつの事気に入っちまったよォ。それと、敬語は外して、口調を直さねぇとなァ。」
清香ががっくりと肩を落とし下を向いた。
「はぁー。そいつは落としてもらうつもりだったのだが。まぁ、ここまで吉さんに気に入られたのなら、もう戻れないな。」
清香にもしぶしぶ認められ、私はにヤンキーになるための一本を踏み出したのだ。