「私もヤンキーになる。」
私が真剣な顔をして言うと、清香が制止し、その後戸惑ったような顔をした。
「は、ちょっとお前何言ってんだよ。」
清香は勢いで言ったようなものの、ハッとして口を抑えた。なるほど、ヤンキーはその話し方で話すのかと私は勝手に理解する。清香が困っているため落ち着けようと少し微笑む。
「私にもその話し方、教えてくれないかい。」
清香が一度目を閉じた。考えているのか、それとも気持ちを落ち着かせているのか。
「そんなの絶対に駄目ですわ。」
目を開けるなり清香はいつもの口調に戻っていた。そこには、いつも通りの清香の姿があった。凛々しく、美しい彼女に少し鎌をかけてみた。
「じゃあ吾郎さんに私が見たこと話そうかな。」
吾郎と言うのは五月雨財閥の社長で清香の父のことである。もしも、清香が危険なことに巻き込まれていると言う噂が流れれば、黙ってはいる事は不可能だろう。彼は一人娘の清香を守るために、清香に外室禁止を命じるだろう。そうなれば私でさえ会えなくなる。清香が一番恐れている人の名を出した途端顔を引きつらせていた。
「それだけは辞めてくださいまし。」
静かに震えるような清香の声が聞こえる。
「じゃあ、私に清香を守らせてくれないかい。」
清香が安心できるように、なるべく優しく囁く。
「私は、一度清香に救われているのだよ。私にも君を守る力が欲しい。それに、これ以上怪我をしてしまったら吾郎さんにバレるかもしれないよ。私を味方に付けておいて悪いことはないだろう。」
私の説得に押し負けたのか清香は小さく頷いた。
「分かりましたわ。でも、チームに入るためには試験がありますわ。私にその手伝いは出来なくてよ。」
清香が呆れたようなそして、少し安心しているような顔をしている。小さい頃から一緒にいるのだから清香の考えていることは大抵分かる。きっと、私がその試験に落ちると思っているのだろう。私はにっこり笑う。清香のためなら、私が何でもすると言うことを見せつけるチャンスだ。
「それでいいよ。じゃあ、これからよろしくね。」
私の笑顔を見た瞬間、清香は少し身震いをした。