後野まつり、15歳。座右の銘は「前だけ見る」。

 何か失敗しても、泣きたくなっても、後ろを振り返ることは決してしない。

なぜなら、人生は常に前にしか進まないのだから。
過去を気にして立ち止まるなんて、そんなことをしている時間はもったいない。

 「でも、それってちょっと不便じゃない?」


 幼なじみのわかちゃんこと天野若子(あまのわかこ)が、半分あきれたように言った。


 「たとえばさ、忘れ物したときとかどうするの?」

 「忘れたものは縁がなかったってこと!」

 「テストで間違えても?」

 「間違えた問題より、次に解ける問題を考える!」

 「ふーん……」


 若子は困ったように首を傾げたが、まつりは気にしない。まつりからすると天野若子は真面目すぎる。

後ろを振り返るから悩みごとが増えるんだよ、と言ってやりたいくらいだ。

「暗い過去よりもまっさらな未来を見ないと、ね?わかちゃん!」

「まつり今日も元気いいねー」

いつも若子は笑顔で皮肉なのか、何か言いたいことを言わないようにしているな、とまつりは思うのだった。