(わたしは、振り返らないって決めたんだ。)

一度誰かと決めたことだ。名前の呪いに囚われないで、前に進むんだって言われて、背中を押されたような気になった。

「まつりって名前も。楽しくて可愛らしくて、いい名前だと思う」

その言葉ではじめて心が救われたような、そんな温もりが伝わる言い方だったとまつりは思い出した。

そんな言葉をくれたのはきっと進くんだ、とまつりは思う。

こんな大切な記憶どうして忘れていたんだろう。
早く、進くんに言わなきゃ。
今までごめんなさいって。

進くんもこのままじゃ嫌だからあんなこと言ったんだ。

だから、この授業が終わったら、進くんにごめんなさいって言いに行こう。

後悔なんかしたくないから。

まつりは、回り続ける時計の秒針を見つめた。

時間は前にしか進まないんだから。