知りたかったけど、知りたくなかった。
理由もなく溢れそうになる涙を瞼の奥に戻そうと上を向いて目を閉じた。
心配する若子をよそにまつりは口を閉じた。
正直、松葉中の記憶に関して何故だかわからないが若子に相談しづらいと思っていた。
だから、新しい恋を探した。昔の話じゃなくて今の話をわかちゃんとしたかった。
だから、わかちゃんに言えるようなちゃんと相談できるような恋をしたい。
前野進に『付き合っていた』と言われたことを若子に言えなかった。
まつりの中で色々な感情が渦巻いた。それは正反対の色が同時に水に溶けて混ざり合っていくようだった。
若子が全て知っていながら、
黙ってそばにいたことが許せないとも感じるし。
若子がまつりに本当のことを言わないだけの理由が何かあるのかもしれない。若子の意思だけじゃなくて、まつりのお母さんが何か絡んでいるのかもしれないし、若子の考えで進くんのこと言わなかったのかもしれない。
ドロドロと頭の中でまわる思考回路に、頭がクラクラする。


