マクドナルドのポテトのアラーム音が聞こえる。


そんなことに気づきもせず話す2人に若子は置いてけぼりを喰らっていた。

「私マックのコーラ好きなんだよね」
「へぇ、なんで?」

「何かね、特別な味がするの」
「ふーん、特別な味かぁ」

若子はまつりと話す前野進を見た。



その瞳の奥に昔の進がいるのかは若子にも察ることはできない。

あまりにも普通に、あの時のことがなかったかのように時間は進んでいるんだなと若子は改めて思った。

「わかちゃんは?」

突然、前野進にわかちゃんと呼ばれて焦った。食べかけたポテトが喉につまりそうになって、急いでコーラを流し込む。

「な、なに?」

若子は急いで飲み込んで答えると、何故だかニヤニヤ笑うまつりが答えた。

「ほらね、わかちゃんって呼んだ方が、ぼうっとしてるわかちゃんには効くんだよ〜」

「え?」

「前野くんに天野さんって呼ばれてもわかちゃん気づいてなかったから」

困惑する若子にまつりがそう言うと、続けて前野進は言った。

「天野さんはわかちゃんって呼ばないと気づかないって」

そう言って2年前の夏と同じように笑う前野進を信じられない気持ちで若子は見ていた。

「あ!そうだ。すす、前野くんインスタ教えてよ」
「あー、俺SNSあんまやってないんよ」

「まつりー断られてやんの」

「LINEでいい?LINEならやってるけど」
「うん」

「グループ作るね」

まつりがそう言うと、若子の元に『テスト勉強会』と言うグループへの招待が来た。

「全然勉強してなかったね」

若子が言うと。驚いたようにまつりは目を見開いた。

「ほんとだ!わかちゃん、数学のテスト範囲って知ってる?」


それから夕方になるまで、テスト勉強会という名前の放課後マックは続いた。