「えー、後の祭りにならないよう!計画的に勉強してくださいっ!はい終わり」
授業中、先生にまで名前をいじられて「えへへ」といつもの笑い方で振り返って目を合わせてくるまつりを、若子は不思議なものを見るように見つめていた。
そう言う強さ、私にはないんだよな。天野若子は天邪鬼だ。なんて私もからかわれた時は、まつりみたいには笑えなかった。
「わかちゃん!放課後図書館いこ!」
そうだった。後野まつりは前しか見てないんだった。
私が細かいことを考えている間にまつりはいつも次のことを考えている。
「勉強?珍しいね」
「まぁね、高校最初の定期テストだし」
「まつりが1週間前から勉強しようだなんて」
「珍しいなんて、ひどいよ!わかちゃん。」
「だってまつり図書館苦手でしょ?なんでまた」
「進!いくぞー」
廊下の遠くで聞こえる声にまつりが耳を澄ましているのが若子にはわかった。
「あー、なるほどね」
「え?」
「前野くんが図書館いくのか」
「なんで分かるの!?」
「相変わらず、恋愛至上主義で」
「それ、どう言う意味で言ってんの!」
バカにしてる?と言いかけてまつりは口をつぐんだ。
いつものわかちゃんと違う気がしたから。いつものわかちゃんならこんなふうに突っかかってこないもん。


