「ごめん……! 傷つけて、ごめん……ひどいこと言ってごめん……!」
 「……」
 「何にも知らないで、ひどいこと言っちゃって……」
 「いいよ」

 私が泣きそうになりながら叫ぶと、彼がいつもの表情でこっちを見て、それからうなずいた。

 「もう気にすんな。過ぎたこと気にしてもおせぇよ。あんときは俺もなんもいってねぇんだからしょうがねぇだろ」
 「でも……!」
 「お前はなぁ……」

 いつも通りのため息をついた彼が、私の頭にポンと手をのせて呟いた。

 「弁当作ってくれただけで……ホントに嬉しかったから。全部苦しいことも忘れて辛い事も吹き飛びそうなくらい舞い上がって……単純だよな」

 乾いた笑みを浮かべた彼に、私は目を見開いて、それからううん、と首を振る。

 「嬉しい……。喜んでもらえて、よかった……」
 「……ん」

 よかった。私が彼の役に立っていたなら……。
 ホッと胸をなでおろして、今の緊迫した空気を流すようにして息を吐いた。
 「実は、こんなこと言った後なんだけど」と言って、彼が話をつづけた。

 「伯父さんの家に引き取ってもらえることになった。今は準備とかしてる」
 「そっか……」

 それが、いいことなのかどうかは分からない。だけど、さっきも話に出てきた伯父さんの家のことなら、安心できる気がする。
 かくまってもらっていたほど親しい親戚で、それを許してくれるならきっと、すごく心の広い人なんだろうなと思った。