今日、私は早起きして弁当作りに励んでいた。

 ……鷹野くんとあんなケンカをしてから、弁当なんか作られてもうれしくないよねって思ったけど、実はあの約束をしてからまだ彼に弁当を持っていけていないのだ。

 昨日は私が言いすぎたし、すごく反省してる。
 もうもと通りにはならないかもしれないけど、一応今までいろいろなことをしてもらったから……その感謝を伝えようと思って今日作っているのだ。
 この弁当は直接渡すなんてことできないし、北校舎の屋上にそっと置いておこうかなと思ってる。

 ……また、前みたいに屋上で話したりしたかったな……。

 この胸に宿っている、まだ燃えていて、熱くて、切なくい気持ちを伝えることもなく、彼とはクラスメイトの関係に戻ってしまうなんて。
 可能性なんて始めからこれっぽちもなかったけど、せめて伝えたかったなぁ……。

 そんなことを一人でぼやーっと考えていると、2階から降りてくる音がした。
 この時間ならきっとお母さんだろう。

 「……おはよう、冴」
 「……おはよう」

 予想通り、降りてきたのはお母さん。でも、エプロンを着てキッチンに立っている私を見て、驚いたように目を見開いていた。
 昨日あんなケンカをしたからなのか、今は別に怒っていないけどなんとなく目を合わせることができなくて、夕飯の残りの肉のタネを使って小さなハンバーグを作っていく。

 作ったやつからフライパンに乗せていき、淡々とその作業を繰り返す。
 するとお母さんが不思議そうにこっちにやってきて、若干の距離を保ったままぼそりと言った。

 「……弁当、作るの?」
 「……たまには」

 ジュージューという音を聞きながら、素っ気なくお母さんにそういった。
 素直になって話がしたいのに、なんでこんなトゲトゲした言葉しか言えないんだろう……。