君と見つけた美しい世界を「希望」と呼びたい。

 「チッ、んだよ、もっと頼れっていっただろ」
 「……」
 「黙っていれば理解してもらえるなんて考え捨てとけ」

 続けて彼がそう言った。
 その言葉に何かがプツリと切れる。

 「……ないよ」
 「は?」
 「私の悩みなんて、鷹野くんには分かってもらえないよ……!」

 ただでさえバランスの崩れた心の中に、今彼がきたら絶対抑えきれないとわかっていたのに、止められなかった。
 こんなこと言いたくなかった。
 だけど、もう一回開いてしまった心のふたはなかなか閉じてくれなかった。

 「何でもできて、みんなから期待されて悩みもなくて、そんな完璧な人になんて、私の気持ちは分からないよ!」
 「……」
 「話を聞いてもらったところで同情してもらったって嬉しくない……!」

 そこまで言い切ったところで、彼の目を見た。
 すると今まで見てきた中で一番冷えていて、鋭くとがった目。その中には黒く感情の読めない光がともっている。
 彼を傷つけた? 悲しませた? いや、違う。怒らせた(・・・・)
 彼がブランコから降りて、こっちに向かってくる。それから私のことを指差して、ため込んできたものを全部吐き出すみたいに低く唸った。

 「……何にも知らねぇくせに、自分だけ傷ついて被害者づらすんじゃねぇ」

 そう吐き捨てたあと、最後にチッと舌打ちをして、彼が身をひるがえして帰っていった。
 その一連の流れを茫然と見ながら、私はそのままベンチに座り込んだ。

 もうどうすればいいか分からない。あんなこと言った後じゃ、もう元通りになんかできない。
 
 ぐるぐると視界が回ってきた。それと同時に頭にガンガンと殴られるような痛みが走る。
 気持ち悪い……。

 最近はこうやって体調が一気に悪くなることなんかなくなっていたのに、なんでこんなタイミングで。

 うう、とうめきながら、一人でベンチにうずくまっていた。