それからとりとめもない話をしているうちに、少しずつ眠気が襲ってきた。

 うとうととしながら弁当のふたを閉め、それから最初と同じように包んで隣に置いておく。
 その間にちらっと彼の顔を盗み見ると、タイミングがいいのか悪いのか彼がこっちを向いて目が合ってしまった。

 それだけなのに、異常なほど胸が高鳴って、聞こえちゃうんじゃないかってくらい強く激しく鼓動が鳴った。
 恥ずかしさを隠すようにして、目線を外し、顔を上げて空を見る。

 すると横から彼が不意に口を開いた。

 「今日」

 「……」

 「放課後、ここに来て」

 「え?」

 思わず聞き返すと、彼がチッと舌打ちして手をおでこにあててこっちを見た。
 じろっと鋭い目ににらまれて、怒らせちゃったかな、と今の自分の行動を振り返る。
 でも、変なことしてないはずだよね……? 聞き返したのがまずかった……?

 ハラハラとしながら彼の目を見上げると、そんな私を見て彼が大きくため息をついた。
 それから鋭くとがっていた目がふっと緩んで、それから口元を覆ってうめくようにつぶやく。

 「お前、空見んの好きなんだろ」

 「え、う、うん……」

 「ん、だから」

 「え……?」

 それって、一緒に空を見ようとか、そういう誘いだろうか。

 放課後、屋上で。
 今までこんなことなかったし、放課後に二人きりというシュチュエーションなんだと意識するとドッ、ドッ、ドッと強く鼓動が鳴り始めた。
 こんな意識してるの、私だけなんだろうな。
 なんとも思っていなさそうな横顔を見つめて、ちょっと悔しくなる。

 なんでいきなりこんな誘いをしてくれたんだろう。
 彼はいつも唐突だ。私の気持ちなんて知らないで、結局断れずに彼のペースに持っていかれる。

 鷹野くんはどう思ってる?
 私のことはどう思ってる?

 聞きたい。知りたい。

 だけど……知るのが怖い。知ってしまったら、今の関係じゃいられなくなってしまいそうだった。

 「……分かった、放課後、ここで」
 「ん」