「っていうことが、あって」
 「……」
 「ごめん、一人で話しちゃった、あのご飯食べ――」

 食べよう、と言いかけた言葉が止まった。
 目の前にパッと小さなものが落下してきた。

 あわててそれを拾う。
 水色と黄色のパッケージで、拾うと硬くて丸いものが入っている。これは見た目的に……。

 「アメ……?」
 「やるよ」

 ぶっきらぼうな声が上の方から降ってきた。

 「……他のやつみたいに気の利いたこと言えねえから、そいつで元気出せ」

 驚いて顔を上げると、横を向いた鷹野くんが片手でおでこに手を当てて顔を隠していた。
 
 え、もしかして……照れてる……?
 そんな考えが頭に浮かんで急いで取り消した。
 な、ないない。

 まさかあんな冷たくてぶっきらぼうで厳しくて怖いあの鷹野くんが……?

 「……うん」

 ワンテンポ遅れて彼に小さくうなずいた。
 彼なりに、励まそうとしてくれているのだろうか。その不器用な優しさに、私は……。

 なぜかこっちまで照れてきてしまって、ごまかすようにしてアメの包装を開けた。
 口の中で転がしていると、甘酸っぱいレモンとしゅわしゅわとした炭酸の味が広がった。

 ……あーあ。

 結局こうなっちゃうんだよなぁ私。
 繰り返さないとか言ってても、結局こうなっちゃうんだよ。

 叶わない恋をして、苦しむのは自分なのにね。
 分かってる。きっと一番、分かってる。だけどね、もう知ってるんだ。

 走り出した想いは、もうだれにも止められないこと。
 好きになった人を、好きじゃなくなるなんてこと、絶対できないこと。

 立ち上がって、彼の横から私も空を見上げた。
 それから少し盗み見るようにした彼の横顔はきれいすぎるほど整っていて、ドクン、と心臓が高鳴る。

 好き。

 鷹野くんのことが、好き。
 
 絶対、こんなかっこよくてハイスペックな男子は私とは不釣り合いだけど。

 ――ごめんね、この想いは止められそうにないや。