確か、小学校6年生の時。私のほかには3人の仲良しな子がいて、いつも4人で行動していた。
休み時間も、登下校っも、遊ぶときだって、ずっと一緒だった。
その中の羽菜が、クラスの中にいた玲くんのことが好きだった。
玲くんはクラスの中でも人気者の子で、ちょっとやんちゃで、でもすっごく頭がいい男の子。
5年生くらいから同じ委員会になって好きになったというのを聞いた覚えがある。
もちろんそれは知っていたし、恋バナとかはあんまりしてこなかった私にとってすごくすごく面白くてワクワクしていたことだった。
だけど、6年生の委員会決めで私は玲くんと同じ図書委員になってしまったのだ。
それからことあるごとに一緒に行動して、活動して、2人きりで居残ったりすることもあった。
友達の好きな人だから、と言って最初にいるうちは必要最低限の関わりしかしていなかったのに、途中から一緒に帰ったりすることもあった。
いつからかは分からないけど、ガラにもなくドキドキし始めて、一緒に居たいなって思ったりして……。
一番恐れていたこと。どこかで、最悪の未来を予想していたその未来が、実現してしまった。
恋を知った。そして自分の想いを隠さないと、という辛さを知った。
なにより、好きなものを、好きな人を、胸を張って好きだと言えない苦しさを……知った。
いつかは忘れてしまったけど、羽菜以外の親友2人に、そのことを打ち明けた時があった。
どんな顔をされるか怖かった。でも、それ以上に黙って想い続けて、羽菜を裏切るようなことはしたくなかったから……。
話すと、二人は頭をなでて応援してくれた。『羽菜のことも応援するけど、どっちにも頑張ってほしいから』と言って背中を押してくれたのだ。
そこですっかり安心しきっていた私は、たまたまトイレでの会話を聞いて絶望した。
『応援するとか言ったけど、やっぱり横入りはよくないよね』
『ずっと好きだった羽菜がかわいそうかも』
『冴はもっと気を遣って欲しいよね、あんなこと言われてなんて言えばいいか分かんないし』
『あたしたちは羽菜のこと応援してるからね』
『うん……ありがと』
知らない親友の裏を知ったような気持ちだった。
すすり泣く羽菜を励ます二人の友達が鮮烈にまぶたに浮かんだ。
嘘だったんだ、あの言葉も、応援も、全部、全部。
足音が遠ざかっていくことを確認して、力なく扉を開けて外に出た。
頭がぼうっとして、足がふらついて、手も震えていた。
親友にあんなことを言われたのはショックだったけど、いちばんは……。
どんなに言われても、好きな気持ちを抑えられないつらさと、好きだと言えない苦しさ。
確かそのあとは、『好きだと思ってたけど友達としてだった』みたいな感じで、けっこうごまかしていた気がする。
不審な目で見られていたと思うけど、羽菜はその言葉に安心したみたいで『そっか、冴ちゃんも好きだって言い始めたらどうしようって思っちゃった』と言って笑っていた。
その笑顔に、さすがに好きだった気持ちを抑えないと、と思った。
好きでいちゃいけない。だめなんだ。
自分が我慢すれば、自分だけ我慢すれば、他の人は辛い思いをしなくて済む。
自分だけなら、何とか耐えられる……。
それに気がついたのは、その時だったような気がする。
そこから私は自分を押さえて、自分の気持ちに鍵をかけて胸の奥にしまっていたのだ。
+++——————+++
休み時間も、登下校っも、遊ぶときだって、ずっと一緒だった。
その中の羽菜が、クラスの中にいた玲くんのことが好きだった。
玲くんはクラスの中でも人気者の子で、ちょっとやんちゃで、でもすっごく頭がいい男の子。
5年生くらいから同じ委員会になって好きになったというのを聞いた覚えがある。
もちろんそれは知っていたし、恋バナとかはあんまりしてこなかった私にとってすごくすごく面白くてワクワクしていたことだった。
だけど、6年生の委員会決めで私は玲くんと同じ図書委員になってしまったのだ。
それからことあるごとに一緒に行動して、活動して、2人きりで居残ったりすることもあった。
友達の好きな人だから、と言って最初にいるうちは必要最低限の関わりしかしていなかったのに、途中から一緒に帰ったりすることもあった。
いつからかは分からないけど、ガラにもなくドキドキし始めて、一緒に居たいなって思ったりして……。
一番恐れていたこと。どこかで、最悪の未来を予想していたその未来が、実現してしまった。
恋を知った。そして自分の想いを隠さないと、という辛さを知った。
なにより、好きなものを、好きな人を、胸を張って好きだと言えない苦しさを……知った。
いつかは忘れてしまったけど、羽菜以外の親友2人に、そのことを打ち明けた時があった。
どんな顔をされるか怖かった。でも、それ以上に黙って想い続けて、羽菜を裏切るようなことはしたくなかったから……。
話すと、二人は頭をなでて応援してくれた。『羽菜のことも応援するけど、どっちにも頑張ってほしいから』と言って背中を押してくれたのだ。
そこですっかり安心しきっていた私は、たまたまトイレでの会話を聞いて絶望した。
『応援するとか言ったけど、やっぱり横入りはよくないよね』
『ずっと好きだった羽菜がかわいそうかも』
『冴はもっと気を遣って欲しいよね、あんなこと言われてなんて言えばいいか分かんないし』
『あたしたちは羽菜のこと応援してるからね』
『うん……ありがと』
知らない親友の裏を知ったような気持ちだった。
すすり泣く羽菜を励ます二人の友達が鮮烈にまぶたに浮かんだ。
嘘だったんだ、あの言葉も、応援も、全部、全部。
足音が遠ざかっていくことを確認して、力なく扉を開けて外に出た。
頭がぼうっとして、足がふらついて、手も震えていた。
親友にあんなことを言われたのはショックだったけど、いちばんは……。
どんなに言われても、好きな気持ちを抑えられないつらさと、好きだと言えない苦しさ。
確かそのあとは、『好きだと思ってたけど友達としてだった』みたいな感じで、けっこうごまかしていた気がする。
不審な目で見られていたと思うけど、羽菜はその言葉に安心したみたいで『そっか、冴ちゃんも好きだって言い始めたらどうしようって思っちゃった』と言って笑っていた。
その笑顔に、さすがに好きだった気持ちを抑えないと、と思った。
好きでいちゃいけない。だめなんだ。
自分が我慢すれば、自分だけ我慢すれば、他の人は辛い思いをしなくて済む。
自分だけなら、何とか耐えられる……。
それに気がついたのは、その時だったような気がする。
そこから私は自分を押さえて、自分の気持ちに鍵をかけて胸の奥にしまっていたのだ。
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