心地よい眠りを遮るようにして響いたアラームの音に、慣れた手つきでアラームを解除した。
 そのまま時間を確認すると、まだ朝の5時前だった。
 そういえば、早く学校に行くようにしてからはこの時間に起きて7時くらいに家を出ていたっけ。

 ……でも、もういいんだ。
 あと1時間くらい寝ても大丈夫だよね……。

 せっかく時間があったので寝ようと思ってそのまま寝返りを打って目をつぶった。
 だけどなかなか寝付けなくて、結局布団の中でぼーっとしながら1時間が過ぎた。


 ふわぁ、とあくびをして目をこすり、歩きながらそっと空を見上げた。
 葉がなくなった枝の中から除く青い空。今日は雲一つない快晴で朝の低い位置の太陽が顔を出していた。

 もうすっかり冬の雰囲気が出てきていて、街路樹は葉がなくなっていて冷たい風が吹いていた。
 カラカラと枯れ葉が道路を転がる音がする。
 まだマフラーなどの防寒具はいらないにしても、かなり寒さが厳しくなってきていた。

 ひたすら学校を目指して歩いていると、後ろからドンッと誰かがぶつかってきた。
 誰だろうと思って後ろを見ると、そこには満面の笑みをした亜紀がいた。
 「驚いた?」と聞いてニヤニヤと笑ってくる亜紀に、私はむうっと頬を膨らませながら「誰かと思ったじゃん」と答えた。

 そっか、今日は電車で来たのか。
 学校から家までの距離がある亜紀は、自転車通学か電車のどちらかできている。
 電車の日は駅から歩いて学校まで来ているので、学校の近くまで来るとこうしてよく会うのだ。

 「なんか今日元気ないね?」
 「えっ、そうかな、気のせいじゃない?」

 まっすぐな亜紀の目に見つめられて、焦りを感じたもののすぐに笑顔を張り付けて手を振った。
 こういうのって気づかれるものなんだろうか。それとも亜紀が鋭いだけ……?

 「あっ、さては鷹野くんのことだな?」
 「な……⁉」

 まさかいきなり核心をつかれるなんて。私の反応を見てにやりと笑った亜紀は、「なるほど」と納得したようにうなずく。
 違うって言いたかったけど声が出てこなくて、結局亜紀にはめられる形となってしまった。

 「そっか。頑張れ、応援してるよ」

 ポン、と肩を叩いた亜紀に、私は耐えきれずにうつ向く。
 珍しくからかってるでもなく、面白がっているふうでもない彼女の声に、そっと背中を押された気がした。

 心配させてしまうからすべては話せないけど、私は「うん」とだけ呟いた。