お昼前になって、片付けが行われた。時間が押しているせいで片付けも中途半端になってしまった。
 ふう、と息をつきながら体育館倉庫の中に入る。
 得点版や、使ったボールかご。イスなどを収納しているうちに、お昼休み開始のチャイムが鳴った。
 ご飯も食べたいけど、あと少しで終わると思うし……とくに予定もないのでゆっくりと片付ける。

 真っ暗な中、ドアの隙間から入ってくる光だけを頼りに片付ける。
 他の子から入れるのだけやっておいて欲しいとのことで断り切れずに引き受けた結果。
 自分の性格のせいだとは思っているけど、やっぱり一人で作業をするのは心細かった。

 「……おい」
 「⁉」

 突然、後ろから見知った声がした。振り向かなくてもわかる。この低い声は、きっと。

 「鷹野くん……? あれ、お昼食べに行かなくていいの?」
 「そんなんどうでもいい」

 そう言いながらボールかごをこっちまで運んできてくれる。
 ありがとう、と言おうとしてずきんと足首に痛みが走った。

 「いっ……」

 思わずしゃがみこんで左足首を抑える。
 するとそれを見た鷹野くんが静かに近寄ってきて、「痛いのか」って聞いてきた。
 返事をしない私に変わって、一歩こっちに近づいてきたかと思うとしゃがみこんでまっすぐに私の足首のところを見て「腫れてる」と小さくつぶやいた。

 「冷やさねぇとそれ――」

 ガシャンッ……。
 彼の声の途中で、一気に視界が真っ暗になった。え、とかすれた声が出る。
 そして嫌な予感がして、ハッと顔を上げる。
 さっきまで細く開いていた扉が完全にしまっていた。
 実は前にもこういうことがあった。
 たぶん理由は、外の鉄のロックが衝撃でかかっちゃったんだと思う。