君と見つけた美しい世界を「希望」と呼びたい。

 「鷹野く――」「お前さ」

 『なにしてるの』と言おう思ったけど、鷹野くんが振り返るタイミングが同じで、すっと口を閉じる。
 無言の1秒。目が合う。
 漆黒に染まる眼の中は異様なほど透き通っていて、全てが見透かされているような……そんな錯覚さえした。

 「嘘つくなよ」

 強く、強く心に響くその言葉が初めは認識できなかった。
 何を言われたのかもわからなくて、かすかに「え」と息が漏れた。
 でもそんな私を追い立てるように、また低いあの声でぐさりと心を傷つけてくる。

 「嘘つくな」
 「嘘? 私、何かウソついちゃったかな」

 彼の声に少し怒りがにじんでいるのがわかって、すうっと背筋が凍っていく。
 彼が何に対してそう言っているのかわからなくて、狼狽えながら彼の目を見る。

 「いつもいつも一人で我慢しやがって……」

 ひとりで我慢? 何のこと、それ……。

 「『大丈夫』って言って、周りの機嫌とって、周り見ながら自分抑え込んで」

 機嫌を取る? 自分を抑える……?
 自分に関係のない言葉たちだと、思いたかった。だけどその言葉が容赦なく心の弱いところにぐさりと深く刺さった。
 なんでそんなのわかるの? 鷹野くんには……全部見抜かれていた……?

 「自分が我慢して、なんか得するのかよ。我慢してたら、誰かが気づいてくれるとでも思ってんのか」

 なんでこんなに言われないといけないの。何も知らないのに、なんでこんなこと言ってくるの。
 言い返したいのに、言葉が出てこない。口を開こうとしたら、唇が震えて言葉にならなかった。

 「逃げてるだけだろ。自分が苦しんでいればいつか誰かが同情してくれるって思ってんだろ。助けてくれるって思ってんだろ」

 彼はそのまま、「そんなわけねぇ」って吐き捨てるように言って、私のことを指差した。

 「みんな自分がみんなのグループから外されないように一生懸命で、お前のことなんか誰も見てねぇだろ」

 なんで泣きそうになっているんだろう。今まで作り上げていた私の像が、音を立てて崩れていく。
 私のこと、何も知らないくせに言わないで。
 偉そうに言って、説教して、何のつもりなの。

 バックを掴む手に、ギュッと力がこもった。

 ここまでいわれたら、もうここになんていれなかった。
 限界までぼろぼろになった体を引きずって、彼の横をすり抜ける。