言っていることは正しいけど、だからって全部が否定されるとさすがに刺さるものがある。

 ぐっと親指の爪を中指の腹に立てる。
 そうするとヒリヒリとした痛みが伝わって、ストレスが出ていく……ような気がする。つらいことがあるといつの間にか無意識でやっている。ここ数年でできていた悪い癖だった。

 「最近勉強に取り組む姿勢が甘いんじゃないの? 友達と遊びに行くなんて、最近は多すぎじゃない? 勉強との両立ができないなら控えなさい」

 言い返したい、私だって頑張ってるんだよって。

 だけど我慢しないといけない。ここで何か言ったら、さらに機嫌が悪くなるのは目に見えているから。
 自分が我慢すれば、他の人は我慢をしなくて済む。自分が我慢すればいいだけの話。
 一番楽なのは、自分が我慢することだって、やっと知れたから。

 「……ごめんなさい。次は頑張るから」
 「……分かったならいいのよ」

 ほ、と息をつく。今日は長引かずにすんだみたいだ。

 朝から、どっと疲れが押し寄せた。