翌日。
 親の機嫌が少し悪くて朝からガミガミと説教コースに入ったので、朝の生徒会活動を言い訳にして急いで家を出てきた。
 朝の空気はなんだか澄んでいる気がする。そう言われれば夜もそうだけれど、何だか特別な静けさがあって朝の早い時間は好きだった。

 今日はいつもより早く家を出てきてしまったので、もちろん学校に着く時間もいつもより20分くらい早かった。

 こんな時間に来ている人がいるのか、と疑いたくなるくらい、校舎の中には先生の姿もおろか、生徒の姿も見えない。
 でもそれこそ夜の学校が特別だというように、あまり人がいない時間の学校は少しテンションが上がってしまう。

 教室に行っても予想通り誰もいなかったので、カバンを置いて準備を終え、何のあてもなく校舎をさまよう。

 冒険みたいでいいかもな、なんて思いながらこつん、こつん、と歩くときになる自分の靴の音を着ながら、なんとなく図書館に行ってみる。
 校舎から離れたところにある図書館がとにかく大きい。図書館自体も広いのだが、  ベンチやパラソルのついたテーブルが置いてある外のスペースは結構みんなが利用している場所だった。

 私が図書館に行くときはだいたいお昼時なので、友達やカップルなどでここら辺はよくにぎわっている。
 だからこんなに静かなのも初めてで、少しドキドキとしてきた。

 ちょっとうしろに向いていた気持ちが、少しづつ前を向いてくる。朝、みんなが来るまでは図書館に籠っていよう、と考えてそっと図書館のドアを開けた。
 『朝の時間でも放課後でも開放してます』という文字が、何だか背中を押してくれている気がして足を踏み入れる。

 フワッとかおる本のにおいと、本に包まれる安心感。図書館の独特な雰囲気と落ち着いた静けさが私を包んでくれていた。

 やっと落ち着ける。
 窓際の席に座って、ふう、と息をついた、その時だった。